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2019年3月30日 (土)

テクノロジーの進化とリーガルイノベーション

 先日、一橋講堂にて「テクノロジーの進化とリーガルイノベーション」というシンポジウムに参加。とかく、技術の進歩に法律が追い付いていない…と言われる昨今、未来志向で学際的にさまざまな分野の専門家が、社会の目指すべき姿を見据えてリーガルデザインすべき――という趣旨。新井紀子先生、小塚荘一郎先生、野間幹晴先生、梶谷勇先生、工藤俊亮先生、角田美穂子先生、大本綾氏と、ケンブリッジ大学のSimon Deakin先生、Felix Steffek先生による講演とパネルディスカッション。とても面白く刺激的なお話しをいろいろ聴くことができました。日本の会社では、法務部門がプロジェクトの最初からしっかり関わるということが少ないけれど、海外では、法務人員が非常に多く、プロジェクトをうまく進めるために、最初の段階で法整備にすら関わるとの話には、仕事の進め方のあまりの違いに唖然としました(アリババ傘下のAnt Financialには250人くらいの法律家が在籍し、政府と一緒に法律を作っている?!)。
 書き留めておきたいことは多々あれど、2つの印象的だったことをメモ。
 1つは、社会変化の端的なまとめ。「モノからサービスへ、民事法から情報法(Data Law)へ、法からコードへ」という変化が見られるとのこと。
 もう1つは、これからの時代に求められる人材育成のための10のポイント。
1.Lifelong and now
2.Interdisciplinary(学際的な)
3.Skills and structures(基本構造)
4.Informed by practice(実践)
5.International and transnational
6.Critical
7.Teaching and research
8.Adaptive(適応できる)
9.Modular
10.Creating change

 また、ケンブリッジでは既に2004年くらいから、これまでの裁判データを使って、AIと弁護士による判決予想対決の試みが繰り返し行われており、軒並みAIに軍配が挙がっている模様。。。(エストニアではもう、法廷にAIを持ち込んでいるとのこと)
 会場には、意見や質問を付箋に書いて貼るコーナーがあったのですが、私も一筆書いてみればよかったなぁ…。「日本の裁判書類は、まだ紙が主流な上、裁判所DBのデータ構造も、CSS化すらされていないように見える
のだけれど、もし、ケンブリッジのような試みをする場合、その実現にはどのくらいの時間がかかると予想されますか?」――
 あと、ちょっぴり辛口の感想を言うなら、“学際的”に社会課題の解決に取り組むという理念には大賛成ながら、「子育てとか介護とか、およそ生物としてのサガに由来する課題に対して、トップエリートの人たちは、どのくらいその現場に関わって課題抽出しているのでしょうか?」――これについては、産総研の先生が、「専門家はとかく自分の専門を手段(トンカチ)にして物事を解決しようとするし、研究は、課題解決よりは純粋な好奇心に起因していて、社会への還元はあまり考えていないこともある」とおっしゃっており、研究の“とっかかり”自体が、北欧型の研究とはずいぶん違う印象でした。 

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