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2019年10月19日 (土)

著作権法上のDL違法化に関する諸問題

20191014_1  先週日曜日に行われた「著作権法上のDL違法化に関する諸問題」という公開シンポジウム、是非お話しを伺いたい方が多数登壇予定だったので、連休の中日ではありながら、家族サービスを後回しにして参加。著作権業界の重鎮や、先の改正案を見送りに持ち込んだ議員さんや、マンガ家さんや技術屋さんや、その他お世話になっている方々もいらしていて、野次馬参加の私には敷居が高かったのですが、非常に勉強になりました。
 主題は、シンポタイトルの通りですが、より広い視野で観て、2つの宿題を与えられた感じです。インターネット時代(田村先生の言を借りれば第3の波の時代)の表現の自由を最大限守るためには、国の施策に関与できる立場か、はたまた大衆に広く発信できるメディアを使いこなせるようにならなければ、現実や世論を動かせないだろう…ということ。そして、いつまでも寛容的利用(おめこぼし)状態を放置するのは健全ではなく、日本もやはり、フェアユースの導入は必須ではないか、ということ。あとは、宿題という感じではありませんが、ネット広告の仕組み(アルゴリズム)を是非知りたくなりました。以下、登壇者5名の方々のお話しから、自分なりに考えてみたいところをメモメモ。

□DL違法化拡大になぜ反対しなければならないのか?
・DLを広汎に違法化すると、権利者が保護を欲していない著作物についても人々の利用を萎縮させる
 (寛容的利用:Tolerareted Useによる暫定的均衡を崩す)
・私的複製の制限規定は「例外」ではなく、保護と利用のバランスを図る境界線を画定している
・“共産主義的”等と揶揄されることがあるが、そのような二項対立でなく、権利と権利者の多様性検討
□刑事法研究者から見た海賊版サイト対策を巡る動き
・政府の「緊急方針」により板挟みにされる者(通信事業者/担当者)の通信の秘密侵害責任の苦悩
・財産犯にも周辺行為を処罰する類型はあるが、共犯的行為構成は困難であるし、助長も疑問
・立法評価として、法益保護に繋がる機序が不明
・法定刑が、他の早期化類型と比較して重すぎるのではないか
・駐禁/スピード違反摘発に係るのは悲運なだけ、という感覚同様、法の感銘力への悪影響がある(※)
□海賊版サイト対策に関する実務的な問題点
・プログレッシブダウンロードには無力
児童ポルノURL事件Coinhive事件、我が国著作権司法にグレーゾーンはない?!
・プロ責法ガイドラインと、Subpoenaの必要性
□情報法の観点から:検閲の禁止・通信の秘密・利用の公平など
・これまでは、アメリカでの「通信」と日本での「通信」(通信+情報処理)は異なっていた
・通信と放送の融合により、従来のコモン・キャリアの概念が揺らいでいる(プロ責)
・知的財産(=情報)の価値は「時と場所と態様」によって変動し「一物一価」は成り立たない
□技術屋からみた海賊版サイト対策とその課題(ゼロワンの技術監修!!)
・ブロッキングは各種あるが、どれも効果は限定的
 (中国が徹底できているかに見えるのは、国が人もお金もかけているがゆえ)
・技術屋的には、犯人逮捕か収入源制限の方が合理的(ネット広告の仕組み要認識)
・表現の自由・通信の秘密・著作権のすべてを横断的に検討する必要
・そもそも著作権法違反か否かが明確に判断できないゆえ、過剰制限になりやすい
□パネルディスカッション
・113条2項1号イ、ロ:「殊更に」「主として」等フェアユースに近づける文脈
・フェアユース導入は必須では?
・システム構成と発信元認知可否の把握(ベッコアメ 事件
・広告を出している事業者を罰するのは、立法しないと困難
 (アドネットワークの仕組み? こんな会社にインタビューしてみたい…) 

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