マスクの特許と特措法
週明けから発送が開始されるというアベノマスク。我が家の使い捨てマスクの在庫は残り8枚ほどなので、洗って繰り返し使える布製マスクの配布は助かります。(薬機法上のマスクの定義はすぐには見当たりませんでしたが、薬事法時代の広告基準はコチラ)。
とはいえ、ここ数ヶ月のマスク流通を見ていて、何がここまでマスクの供給を妨げているのか、よくわかりませんでした。
以前、新型マスクを考案した人が、特許権侵害の警告状を受け取ったのを間近に見たことがあるもので、もしや、特許権が供給を阻害しているのか?!と思い、とりあえずJ-Plat Patを叩いてみるとーーー。
全文検索で「マスク」と入れると、835,622件もヒット(まぁこの中には、別の意味のマスクも含まれると思われます)。追加条件で「使い捨て」と入れると8,542件、さらに追加で「立体」と入れると1,991件。。。まぁ、たかが鼻と口を覆う単純な製品のように思えるマスクのようなものすら、かように大量の特許権のクリアランスを検討しないと、安心して製造販売に踏み切れないという実情(汗)。母のように、家族が使う分だけ手作りする分には、こんなことを気にする必要はないのですが、“業として”製造販売しようとすると、途方もない調査が必要になります。
それでも、ある種、医療品の分野に属するマスクが、このような感染症による世界的危機の状況下で、すぐに調達できない原因が、人工的な独占排他権によるものだとしたら、市民の理解は得られません。こういう時のために裁定実施権があるのでしょうが、これまでに裁定が行なわれたことはないと聞きます。では、特措法には、緊急事態下における独占排他権の無効化のような条文はあるのでしょうか…?
ということで、読んでみました「新型インフルエンザ等対策特別措置法」―――。附則やら政令やら通知やら、細かいものは置いておいて、とりあえず法律条文の78条だけ。。。
本法の措置が機能するのは、とりあえず緊急事態宣言が出されている間ということで、指定行政機関や指定地方公共機関は幅広く従うことになるようです。事業者及び国民としては、予防に努める責務が課されますが、(特許権等のような)権利が制限される場合は最小限にとどめる必要はあるようです。
マスクを適切に供給することは、「まん延防止の措置」になると思われますが、行動計画案の策定には、学識経験者の意見が必要となる模様。
44条までは、措置を進めるための手続き規定が中心ですが、10条には備蓄の規定があり、病院や介護施設用に備蓄を進めているために、市販品は出回らないのか?? また、目下進められている外出自粛要請は、45条の協力要請等の規定が根拠のようです。マスクの製造推進には47条の医療等の確保や50条の物資及び資材の供給の要請、55条の売り渡しの要請が使えそうですが、薬とか人工呼吸器等の方が優先順位は高いのか??(アベノマスクの無償提供は、64条の譲渡等の特例か??)
結局、78条までの中には、独占排他権を一時的に無効にして、裁定により権利制限できる、というような規定は見当たりませんでした。。。
まぁ、マスクによる感染症まん延防止の効能効果自体が、それほど明らかなものでない以上、特許権を制限してまで断行すべき事項には当たらないのかもしれませんが、一般市民のできる手近な予防措置として、心の平穏維持には役立ちそうなんですけどねぇ。。。感染者への誹謗中傷のような、的外れな行為がまん延し、マスクをしていないだけで白い目で見られる中、世間の秩序維持には必須のアイテムになりつつある昨今ですねぇ(涙)。
【The Open COVID Pledge】 一方、大学院同期の友人情報によると、コロナ対策のために知的財産を無料で使えるようにするための誓約宣言運動も始まっている模様です。素晴らしい!
昨日、NHK「ネタドリ!」を見ていたら、葛飾区で感染症患者の受け入れをしている病院の院長がインタビューを受けていたのですが、なんと!、私の小中学校時代の同級生でした!!! 医師になったとは聞いていたけれど、頑張ってるんだなぁ。。。日々、感染者に命がけで対応してくださっている医療関係者の皆さんに、心からのエールをお送りしたいです!
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