プライバシー、COVID-19、デジタルPF
先日、表題のウェビナーを聴講。「接触通知アプリの法的課題」と「情報自己決定権の現代的な課題」というホット・イッシューについて、憲法学の気鋭の先生方がご講演。
接触通知アプリについては、LINEで突如、電話番号登録されている人のアイコンが表示されるようになる時の違和感と同様、いくら「個人情報は取得しません」と言われても、見ず知らずの人とニアミスしていたデータが延々と記録されることの気持ち悪さは簡単には拭いきれず。また、ターゲット広告の違和感も依然としてあり、自分のWeb閲覧履歴やスマホの位置情報などが、知らない間に収集・利用されることと、それによる便利さとのバランスを、どこまで許容できるか、という問題意識のもと。。。
以下、自分用に備忘メモ。
・「接触通知アプリ」の日本版COCOAは分散型、フランスのSTOP COVIDは集中型
・フランスでは、当初発表されなかった、1m15分に満たないデータもサーバに送信されていた!
・フランスはGDPR9条2項i号のもと、公衆衛生分野で公共の利益を理由とし、例外的にセンシティブデータ処理
・事前の統制は完璧ではなく、事後的な統制を
・「自己情報コントロール権」は憲法的な基本権か、フィデューシャリーか
・(第1期)古典的プライバシー権:私生活秘匿兼、(第2期)自己情報コントロール権、(第3期)アーキテクチャ志向の情報自己決定権
→自己決定の形骸化・無意味化
・宴のあと事件、住基ネット事件、江沢民講演会事件、GPS判決
・個人の世界→集合の世界
・宗教戦争の様相:データ保護教vs.データ利活用教(保護教は邪教?)
・法制度が足踏み状態(「個人情報の保護を求める権利」「プライバシー権」「自己情報決定権」:多元的)
ご講演の中に、「自己情報決定権は、“つながり”を決定する権利だと思う」というニュアンスのお話があったのですが、「著作者人格権」とのアナロジーでも捉えられるんじゃなかろうか…と感じました。「あなたが生まれなければ、この世に生まれなかったものがある。」というCMがありますが、創作に限らず、個人情報も「あなたが生まれなければ」決して生まれないという点で(笑)。ドイツの著作者人格権はとても厳格で、アメリカは利活用優先、という哲学も類似するように感じます。自己情報決定権に関しても、ドイツは厳しくアメリカは情報を回していくことを優先させている。。。(ケンブリッジ・アナリティカ後は様子が変わってきているようですが)。。。公表権:ネット・アプリを利用するか否か、氏名表示権:匿名化を望むか否か、同一性保持権:捏造や操作排除・・・と考えれば、同じ人格権淵源という点で当たらずといえども遠からず。
“プラットフォーマーが国家をハックし始めている”という喩えが刺激的でしたが、確かに最近は、国家ってものが、税金を原資としたサブスク式のサービス業に見えなくもなく。。。今回の接触通知アプリに関しては、Apple/GoogleのContact Tracingの技術をもう少し勉強しないと、課題がはっきりわからんな…と思いました^^;;。
演者の先生方はいずれもデータ利活用派とのことで、主義主張が異なるとしてもスタックさせずに、「まずはやってみる」という姿勢を推奨されていた点に共感しつつ、貴重なウェビナーを開講していただいたことに感謝感謝でした。
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