『進化した猿たち』
今月半ば、星新一さんのエッセイ集『進化した猿たち』を読了。
星新一さんのショートショートには、学生時代にずいぶん親しんでいましたが、最近はご無沙汰していたところ、本屋で偶然見かけて衝動買い。星さんは、欧米の一コマ漫画を蒐集するのが趣味だったのですが、それを分野別に分類し、それぞれについてエッセイを綴った雑誌連載をまとめたもの。言われてみればショートショートって、かなり一コマ漫画的。頭の体操や、価値観の転換が容易にできるという点で、共通項が多いですね。
ところで、本書の最初のエッセイが、「ぬれ手でアワ」というタイトルなのですが、なんとなんと、発明や弁理士をめぐる一コマ漫画について書かれていました! かねがね、超マイナーな弁理士という職業を紹介するコンテンツを探しており、『下町ロケット』とか『閃きの番人』とか『ストーリー漫画でわかるビジネスツールとしての知的財産』とか『ぼくは愛を証明しようと思う』など、わずかながら無いこともない…という状況でした。
そんな中、この1つ目のエッセイの扉には、“EDISON AT THE PATENT OFFICE”というタイトルで、弁理士が“You again?”とあきれている一コマ漫画が掲載されていたのです(笑)。星製薬創業者の長男だった星さんが、幼少時から弁理士を知っていたであろうことは想像がつきますが、本作の話の展開にはいささか度肝を抜かれました。
なぜなら、まず、「人類の理想とは、ぬれ手でアワといった調子で大金をつかみたい、の一語につきる」と始まり、その本能の発露の第一の形は犯罪。第二の形はギャンブル。そして第三が「特許出願」と書かれていたからです(苦笑)。いつものブラックジョークなので、どこまで本気かわかりませんが、星さんにとって特許は、ぬれ手でアワの実現に寄与するものと映っていたのですね。一度は発明熱に取りつかれ、どちら側からも足を突っ込めるサンダルを考案して、実際に特許事務所に出願依頼までしたそうで! 残念ながら、先行出願があり、ぬれ手でアワとはいかなかったようですが、弁理士ネタの一コマ漫画の蒐集作品が三十種くらいはあるとのことで、是非全部見てみたいなぁ~と思いました^^;。
このエッセイは、未来予知的に、「この装置はですね、特許の調査、書類作成など手続きを一切安くやってくれる弁理士ロボットで…」で終わっています。近い将来、「ほうれ、見たことか」とおっしゃるような状況になるのか…。(人間が審査している間は、AI利用は中途半端なままだと思っているんですが…^^;;)
とりあえず、個人的な近々の興味は、今年の「第8回 星新一賞」で、AIの作品がどのくらい一次審査を通過するのか、ということ(笑)。
【Patent2020.7】 奇しくも、今月の『Patent』の巻頭の「今月のことば」で、弁理士業務のAIによる自動化について書かれているのを読みました。人間の文章作成能力の証明のため、弁理士諸君、星新一賞に応募して、入賞しよう!とハッパをかけられているようでした(笑)。
【SUITS】 アメリカ版ドラマ「SUITS」を見始めたら、第3話に特許出願の話が出てきました。Season1の公開は2011年で、この当時のアメリカは先発明主義。先願主義の施行は2013年3月16日なので、今見ると違和感がありますが、(発明日の証明は難しいながらも)やっぱり理念的には、(権利付与はともかく)先に発明した人の名は刻まれるべきだよな~と、知財を勉強し始めた頃の思いが蘇りました^^;;。
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