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2020年9月23日 (水)

「著作権法50周年に諸外国の改正動向を考える」

 先週、国際大学GLOCOMの公開コロキウムで、表題のウェビナーを聴講。副題は、「デジタルアーカイブ、拡大集中許諾制度、孤児著作物対策」ということで、まさに盛りだくさん! 政治家・実業家・学者というバラエティに富んだ方々をお招きして、EU、イギリス、アメリカ、韓国の状況も外観しつつ、幅広い方向から、今後のデジタル著作権法への取り組みについて考えさせていただきました。
 端的な目標としては、いかに著作物利用のための権利処理コストと手続き時間を減らしていけるか、ということに尽きるのでしょうが、オンライン・ワンストップですべての手続きを簡素化できるような仕組みが、利用者側からは強く求められます。新政府のデジタル化の波にうまく乗れたらいいな…と思いながら拝聴しました。
 各々の先生方から興味深いお話しをいただき、メモはA4版用紙2枚にびっしりになりましたが、以下、注目ポイントを自分用にメモ。
・「デジタル社会実現に向けての知財活用小委員会」では、デジタル・コロナ禍の両面で、多岐にわたる検討が進められている
・データの所有権や、内外格差についても検討課題として上がっている
・裁定には5か月ほどもかかり、1%くらいしか出現しない不明権利者への事前供託には疑問
・拡大集中許諾制度のためのスーパーJASRAC(委託なく許諾を行なう)的な公益的存在が求められる
・デジタルアーカイブ推進には、どうしてもお金の問題が絡む(ヨーロピアーナ、ジャパンサーチ)
・EUでは、Out of commerceのECLと、権利制限規定追加の2段階で、絶版著作物への対応を考える
・学術研究成果のオープンアクセス促進、オープンデータ化は必須
・イギリスは、ブレグジットにより、法文内の「EU,EEA,構成国」といった文言箇所の調整だけでも大変
・イギリスは、孤児著作物指令も廃止、著作権ハブも仕組みが面倒であまり利用が進んでいない
・フェアユース導入国は、全般的にGDP成長率が高い傾向
・北欧は1960年代から拡大集中許諾導入
・アメリカでは、政府に先んじて私企業がデジタル化を推進(書籍4000万点強)
・韓国のフェアユース導入は2011年(引用の予備的抗弁としての利用が多いが、機能している)
・韓国:著作物にICN番号を付与して、著作権情報管理(3740万件)、ライセンス管理システム(CLMS:音楽・言語・ニュース)
・韓国:公共著作物自由利用DB、公共データポータル、オープンアクセスプラットフォーム、いずれも充実
・韓国:Netflix等の海外資本がコンテンツ業界に参入しており、OTT分野でのECL導入の議論
・ベルヌ条約の原則(無方式、要許諾)は当面動かせない中、法律以外の部分で利用しやすさを実現
・日本は法律を神聖視しすぎる傾向、生活やビジネスを更新していくためのツールとして柔軟に
・とはいえ、法制度は人権等にも関わることで、改正の失敗は許されないため、取引所創設等で大胆に
・外国プレイヤーが、日本の法律を使って何をしてくるかには留意

 いろいろ印象的でしたが、中でも、韓国の各種DBの充実ぶりに目を瞠りました。UI を見るだけでも、配慮が行き届いているのを感じ、ピンポイントの明確な目標(コンテンツ産業の振興)に邁進しているのが見て取れる感じでした。そういう意味では、日本ではまだ、マイナンバーカードと戸籍・住民票等のデータ連携すら出来ていない状況。“使い勝手のよいシステムを作る”、という、断固たる意志なしには、なかなかユーザを増やすのは難しい気がしています。
 貴重なコロキウム聴講の機会を与えていただき、ありがとうございました!

ギンズバーグ女史逝去】 先週末、アメリカの最高裁判事ギンズバーグ女史の訃報。ご冥福をお祈りします。

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