「羅生門」
少し前、国立映画アーカイブの前を通ったら、映画「羅生門」展をやっているのを見掛けました。
それがずっと気になっていたのですが、台風14号が接近する雨の土曜日、家人が誰もいなくなった午後、ご近所からいただいた栗を剥きながら、Netflixで「羅生門」を見てみることに。。。
芥川龍之介の「藪の中」を原作とする本作、平安時代に、ある藪の中で起こった強盗強姦殺人事件とでもいう出来事につき、検非違使が複数の証言者を審問するのですが、その証言がすべて食い違い矛盾し錯綜して、真相がわからない…というのが大きな筋。誰もが自分に都合のいいように言い繕って、真実を歪めて平然としている様に、羅生門に棲む鬼さえも逃げ出した…というのが、映画が炙り出した人間のサガで、それでも救われるのは、やはり善良な人がいるから…といった感触でした。
本作を観た第一印象は、「あぁ、現代人の心は、ずいぶん荒んでしまっているのかも…」ということでした(否、私の心だけが荒んでいるのかもしれないけど…泣)。
皆が皆、自分にいいように嘘を付くさまを見て絶望する旅法師が、ひどく初心に感じられたのがその証拠。今や、日々のニュースに溢れかえるご都合主義的な弁舌の数々にすっかり慣れっこになってしまい、人が真実を語らないことを憂う、という気持ちを失ってしまっているのを痛感。私など、ラストで捨て子を引き受けて帰る木こりさえ、事後に売り飛ばすつもりでは…と疑ってしまう体たらく(涙)。。。
「羅生門」は、観る人の心や考え方やその時の世相次第で解釈が変わり、観方が変わる、不思議な力を持っている気がしました。それにしても、ボレロのような音楽や、洋画のような躍動感、土砂降りの雨や蝉の声などの音声の使い方、表情を大写しにする独特の演出など、後世の映画人にいろいろと影響を与えているらしき演出の数々が、すごく印象的な作品でした。
(栗を剥きながらの鑑賞でしたが、映画に夢中で何度も手を切りそうに…^^;;。 この晩は栗ご飯と豚汁~♪)
| 固定リンク
「映画・テレビ」カテゴリの記事
- VIVANT最終回から一週間…(2023.09.24)
- 牧野富太郎と南方熊楠(2023.09.18)
- 「リンカーン弁護士」(2023.08.16)
- 「John Wick」(2023.08.10)
- 「ミッション:インポッシブル」(2023.08.03)
コメント