『本日はお日柄もよく』
先日、『シネマの神様』を読んだ後、また近所の本屋をのぞいたら、原田マハさんの本はかなり限られていることを発見。でも、もう数冊読んでみようと思っていたので、平積みになっていた『本日はお日柄もよく』と『たゆたえども沈まず』の2冊を買ってきました(『翔ぶ少女』を探してたんだけどな~)。
先に軽そうなのを…との思いから読んだのが、『本日はお日柄もよく』。
まだ日本ではあまりメジャーではないと思われるスピーチライターという仕事をめぐる物語でした。最初のうちは、結婚式とかイベントでのスピーチばかりかと思いきや、後半は一気に、政権交代を目指す野党の人たちを加勢して、日本を“よい方に変えていこう”とする人たちの物語になっていきました。
近年は、耳触りのよいキャッチーなフレーズを使うと、それがマスコミに重宝に使われて拡散する傾向ばかりが目立つので、「言葉を選んで人心を動かす」ことの善し悪しも考えさせられますが、その言葉が、真の志に根付いており、言葉だけに終わらずに実行に移されるなら、下手な話よりは上手い話の方がいいに決まってます。実際、長い歴史を振り返れば、言葉の力で人の心が鼓舞され、政局や歴史が変わった局面も多々あるし。。。
このストーリーもきっと、かなり取材されて書かれているのだと思うのですが、気になったのは、与党も野党も、二大広告代理店のコピーライターをコンサルタントに付けて、戦略的にブランディングやスピーチライティングを行なっていたこと。どうも政治の裏の数々の施策に、フィクサーのように(営利企業である)広告代理店が関わっているように感じられる昨今、イメージ戦略ばかりが先行して、肝心要の政策に関する分析や検討が後回しになっていやしないかと、心配になってしまいました^^;;。
本書内でも、後期高齢者医療制度や年金問題について触れられていましたが、団塊の世代が75歳を迎えるという2025年頃、一体日本はどうなっているのか…と、物語の展開よりも、日本の今後の方が気になってしまったのでした(苦笑)。
【大島浩氏の肉声】 過日、たった20日で日独伊三国同盟を成立させA級戦犯となった大島浩氏の肉声が、NHKニュースで放送されました。本書を読んで、スピーチの巧妙さだけでなく、客観的な分析に基づく念入りな議論が、いかに大切かを考えさせられました。
| 固定リンク
「書籍・雑誌」カテゴリの記事
- 日本野鳥の会 創立90周年記念誌(2024.07.17)
- 「時間」と「SF」(2024.06.25)
- 『森と氷河と鯨』(2024.04.12)
- 家庭画報3月号(2024.02.28)
- 『還暦不行届』(2024.01.18)
コメント