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2020年11月20日 (金)

『クオリアと人工意識』

20201106_4  夫が買い置いていた茂木健一郎さんの『クオリアと人工意識』を、ちょこっと横取りして先読み(笑)。
 かねてより夫から、「自由意思ってあると思う?」と問われ続け、夫は「ある」、私は「ない」という立場を取っていることから、本書のp.281以降を、特に面白く拝読しました。
 昨今研究が活発化している人工知能。それには3つの型があると言われており、「オラクル(神託)」「ジーニー(魔人)」「ソヴァリン(君主)」という風な進化を辿るとも。私はいまだに「シンギュラリティ」というのがどういう時点を言うのかがよくわかっておらず、一部の能力においてはとっくに人間を超えているけれど、全人的な能力を超えるということの意味が理解できない。その点、本書で茂木氏が繰り返し述べておられる、脳にとどまらない“身体性”を踏まえることの大切さに、痛く共感しました。
 エリーザー・ユドコフスキーという人が唱えた「統合外挿意思」とか、バートランド・ラッセル氏の「5分前仮説」というものを知らなかったのですが、恥ずかしい話、エピローグでサユリママが内心つぶやいていた「本当は、この世界には、たった一つの『意識』しかないのだ。」という感覚は、今の私にはごくごく自然なものになっています。目下の人工知能研究では、まさにソード・アート・オンラインの世界のように、“記憶や意識をコピーする”といったことが模索されているようだけれど、脳Aと同等の脳αをコピーできたとして、Aしか存在しなかった世界のコピー前のAと、Aとαが存在する世界でのAとは、その時点で別物になっている…という感覚。それがあまりに当たり前に感じられるのは、私がおかしいから?? 「私」という人格も、さっきまでの「私」と今の「私」とは、実のところは変化してしまっている…という感覚。
 一方、茂木氏が“思い上がっている”と指摘するトンがった人工知能界隈の危険な動向には不安を感じつつも、人工知能GPT-2に関する論文を査読なしで「オープン・AI」のブログに掲載したり、ボストン・ダイナミクスのロボット技術に関する情報をYoutubeに動画投稿したり、ビットコインの仕組みを広く公開したりといった、“アナーキーで反権威主義的”な情報公開の仕方には、快哉の声を上げたい気持ちもあります。
 個人的には、子どもを産んだ瞬間から、ず~っと様々な刺激を精力的に与え続けたママさんパパさんたちに、人工知能の成長に関して感想を聴いてみたいなぁ…と思います。産まれたての赤ちゃんは、まぎれもなく、脳だけでなく、全身で世界を受け止めている感じがして、「意識」を意識することの萌芽を考えるには、“身体性”は避けて通れない…と思わされます。
 どんな思索や研究をしていても、結局、「意識」へと行きついてしまうのは、それがとても普遍的なものだからかもしれません。少なくとも、茂木さんのような方がこういう一般書を書いてくださることで、変にオカルティックな目で見られる恐れは軽減されたかな~、と感謝!^^;;

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