国際知財司法シンポジウム
昨年開催予定だったものが延期になり、先週ようやく、「国際知財司法シンポジウム」がWeb開催されました。
午後8時から11時40分までという長丁場だったため、(アーカイブもされるようなので)第1部(裁判所パート)のみ視聴。
今回は、日米欧における均等論DOEの実情に関するパネルディスカッションでした。(以下、Webinarを視聴しながらのメモなので、まとまっていませんが悪しからず)
模擬事案としては、原告特許権者Pony社が、自社の「中空ゴルフクラブヘッド」に関する特許を侵害するとして、被告Donkey社の「スーパーIP2020」なる中空ゴルフクラブヘッドを対象として、5億円の損害賠償請求を行なった、というもの。従来は、金属とFRP(繊維強化プラスチック)の接着が不十分であったという課題を、FRPの糸を貫通穴に通して、エポキシ樹脂含有の接着剤で接着することで、より強固に接着できるようにしたことが、発明の主要要素となっていました。原告は、出願過程で、明瞭でない記載の釈明として「貫通穴の通し方(複数の穴に交互に通す)」を補正で書き加えているとのこと。被告の製品では、貫通穴を通すものがFRP製の“糸部材”ではなく、“帯片”となっており、1つの穴に1つの帯片が通っているという構成でした。
日本の裁判所では、文言侵害の検討のあと、お馴染みの均等の5要件を検討することになりますが、アメリカ、イギリス、ドイツでの検討の仕方は、共通する点も多いながら、出願経過の参酌も含め、微妙な違いがありました(ドイツ:3要件、イギリス:Actavisの3つの質問、アメリカ:3つのテスト)。 模擬裁判で最初に原告代理人が主張した文言侵害は4か国すべてで否定、均等侵害は成立、という結果でした。
驚いたのは、イギリスでは、20世紀初頭のマルコーニによる通信に関する特許に対して、すでに均等論が使われた、とのお話。目下は均等論には蓋をしている状況のようでしたが、さすがGreat Britainという感じでした。
均等論は、クレームの拡大解釈につながるため、予見可能性という観点からはできるだけ使わない方がいいのでしょうが、発明奨励や権利保護の観点ではどうしても必要になってくるからこそ、その各国運用を知っておくことは、特許に携わる人には必須なんですね。
後半は、コロナ禍でのWeb会議の司法寄与の話でしたが、いずれの国でも、ロックダウン後は物理的な出廷は控えさせたり休廷したりして、ビデオ会議システムを追加したり新たに導入したり(ドイツはMicrosoftTeamsを新導入)して対応したとのこと。案件のトリアージも行われたようでした。イギリスでは、2015年以降、文書はすべて電子的に交換されているとのこと! アメリカでは陪審員裁判もあるため、刑事のみ進めて民事は延期したりしたそうです。また、トランプ政権下でも、裁判所ではマスク着用を必須にしている所が多かったとのこと。いずれの国でも、パンデミック後も何らかの形でオンラインの手続きは継続するようです。日本はまだ、口頭弁論や証人尋問は出廷が原則のため、法改正が模索されているとのこと。
コロナ禍が、否応なく司法手続きを変える中、弁護士さんが「5分の審査や日程調整のために、これまで新幹線で3時間移動していたことを思うとゾッとする」という言葉が印象的でした。
【チェリートマト】 本葉がだいぶしっかりしてきました~♪
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