「資本論」@100分で名著
今月のETV「100分で名著」は、マルクスの『資本論』でした。19世紀の人なのに、まるで宇宙飛行士かのような科学的視野で、コモンについての現代的な洞察を繰り広げた偉人に、ただただ感服しました。
近年は、「資本主義じゃなくて資本家主義なんじゃ?」と思うようなマネーゲームの応酬だし、「この仕事は一体誰の役に立っているんだろ?」と思うような、意味を見出しがたい仕事が溢れている印象も。こんな印象が、なまじ的外れとは言えないのかも…と思わされた『資本論』の概要。
最初にハタと気付かされたのは、(当たり前のことなのかもしれませんが)資本主義は等価交換じゃないんだってこと。商品の売買には必ずマージンが伴い、経済成長の強迫があるってこと。ご近所や友人との物々交換では、等価交換を旨とするのに比べ、市場では、適性な価値が把握しづらく、見えない形での利潤追求にからめとられてしまっている感じ。。。
また、本来は誰しも、自らの仕事の主人であるべきなのに、効率を何よりも優先させた一部のイノベーションでは、労働が疎外され、人が仕事に隷属してしまう…という構図に愕然。「構想して実行」するからこそ人間的な魂のこもった仕事となるべきところ、次第に構想と実行が分離分業され、労働の完結性を欠くまま、不完全燃焼に陥る人が増える。。。『ブルシット・ジョブ』なんて言葉が生まれてしまうほど、“働かされる”感に苛まれる人が多いのは、健全な社会ではないのでしょう。
どんな仕事でも、創意工夫はその人次第、真心をこめて労働すれば、そこには自ずと学びや喜びがあるものだと思っているので、必ずしも資本主義社会のイノベーションの元での労働を否定するつもりはありません。構想と実行が分離しても、それぞれを担当する人同士が意思疎通していて、同じ目的に向かえているなら、そういう仕事は素敵な仕上がりになると思う。。。それでも、成熟しきった資本主義を、ちょっと考え直す時期に来ているのかも…と思うことが増えたのは、確かです(cf.:MEGA)。
今回『資本論』について考えたことを携えて、『未来をつくる言葉』を読んだら、どんな気付きがあるんだろう。。。Netflixで「監視資本主義」というドキュメンタリーを観たので、感想はまた後日。
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