『次のテクノロジーで世界はどう変わるのか』
先週、友人が薦めてくれた表題の本を一気読み。
少し前、リニューアル初回のWBSに孫さんが生出演し、日本のAI技術の遅れに警鐘を鳴らしているのを聞いたばかりだったので、欧米の動きに精通しておられるらしき著者の見立てにも関心を持ちつつ拝読したのでした。
個人的には、ハイパーループとかAmazonの冷蔵庫とかGoogleの靴の開発のその先が気になりました。ただ、こうしたテクノロジーの進歩を語る際、今後避けて通れないエネルギー需給のことに一切触れられていなかったのは、やや消化不良だった気もします。独禁法の適用トレンド等も予想してもらえると嬉しかった。。。また、国土のスケールや民度の差異が、企業の技術開発にも知らぬ間に影響しているのを感じて、「何をターゲットにしてどこを目指すのか」によって、取るべき姿勢も変わるなぁ…と感じました。
明らかに、FAANG+MやBATHは、世界規模のプラットフォームを目指してしのぎを削っていますが、日本はもっと、自然との共生とか省エネとか、慎ましく快適にサステイナブルに生きるための技術(SX)を磨くべきなんじゃないか…なんてことを思ったり(笑)。
データ・ドリブンの社会になっているのは間違いなく、世界が情報の塊であることも間違いない。けれど、どういうレベルの情報をどこまで集めて解析しコントロールするか、その限度をわきまえておかないと、大変なことになるのも目に見えている。。。
本書で印象的だったのは、「“信頼できる身近な人”になることで、不思議と情報が集まってくる」という指摘でした。怪しげな情報や操作された情報も溢れかえる世の中ですが、身近な人に信頼される人のところには、自然と様々な情報が集まる。そして、多様な情報を衡平に見るためには、データ・リテラシーが必要。。。という指摘。巨大な資本力とテクノロジーで力業で搔き集めたデータが、世の中の実相を映し、コントロールの材料になるのなら、個人というスケールでは、それに踊らされずに活用する意識を保たないと…と、思わされたのでした。
本書を読み終えた日、アメリカのフェルミ・ラボがMuon G-2で標準モデルからの逸脱を示唆した、というニュースがありました。夫のスマホにはそれがTOPニュースとして伝えられたのに、私のスマホにはそのニュースはほとんど表示されず、自ら探すハメに…。日頃の二人の閲覧履歴が、こんなにも如実な差異として表れて、ゾッとしました。すでにかなりの割合で、個々人が世間を観る窓が操作されているという現実。嗜好に合わせてリコメンドしてくれていると考えれば便利であることも確かですが、そうした情報だけで世の中を知った気になっているのだという自覚を持たないと、プラットフォーマーの意のままになってしまいますね。
(本書を紹介してくれた友人は、近頃、Microsoftが軍からの大型受注をモノにしたことで、競争が激化することを懸念しつつ、今はAmazonがらみで映画「ノマドランド」の原作本を読んでいるとのこと。。。労組結成は否決されましたね…)
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