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2021年4月29日 (木)

『クララとお日さま』

20210417_1 20210422  先週、EUがAI の利用に包括的規制を課す法案を検討しているとのニュースがありました。越境データへの反応も早いなぁ…と思いましたが、顔認証やAI の利用に関しても、すでにしっかり検討されているようです。学習用データの利用に関してはパラダイスの日本ですが、AI 利用に関しても、今から課題の洗い出しをしておくべきなのでしょうね。

 そんな中、『クララとお日さま』を一週間前に読了。(以下、ネタバレ注意)
 読み始めからずっと、何か不穏な空気を感じ続ける読書でしたが、結末はクララというAF(人工親友)に大事なことを教えられたような気持ちになりましたーーー。また、子どもの教育もAI 開発も、“自主的に学ぶ姿勢を育む”ことが大切だということもーーー。
 時代も場所も、架空のどこかの世界。富める家の子どもは、“向上処置”という遺伝子編集を受けて能力を高め、貧しい家の子どもは、生まれながらの才能だけを頼りに生きる世界。富める家の子どもは、AF(人工親友)を買ってもらい、貧しい家の子どもにはそれは手の届かない贅沢品。そんな格差社会にあっても、親は皆同様に子どもの成長を願い、社会性を育むことの重要性を認識し、優越感や劣等感に苛まれながらも、皆どこか寂しさを抱えながら生きている世界。
 太陽エネルギーで駆動する家電として開発されたAFは、旧式や最新式で機能にも偏りがあり、それぞれに個性を備えています。やや旧式のクララは、嗅覚こそ搭載されていないものの、優れた観察力や洞察力は最新式以上の素質を持っていました。そんな彼女が店頭に並び、ジョジーという病気がちな少女に見初められて買い取られ、共に暮らしながら様々な人間模様に触れ、自分の役割を全うしていく物語。
 太陽を神のごとくに信頼し崇めながら、自らの迷いや悩みに揺れつつも、ただジョジーの幸せを願って行動するクララの考え方が、本当に美しく誠実に思えました。ジョジーの母親は、ジョジーに万が一のことがあったら、クララを身代わりにしようと考えていましたが、クララは人間社会で多くを学ぶうち、どんなに頑張っても自分はジョジーにはなれないことを悟ります。ジョジーをジョジーたらしめている“何か”は、ジョジーの中だけでなく、ジョジーを愛する人たちの中にも存在していることに気づくから…。
 向上処置を受けているジョジーと、向上処置を受けていないリックは、幼少期からの幼馴染でお隣さん同士。お互いを大切に想いながらも、時にぶつかり合い、時に皮肉に当たり、複雑な感情を抱えながら成長します。彼らの母親たちの、子どもへの接し方を観ながら、つい我が身を振り返ってしまいました。自分の、子どもへの接し方は、果たして“善い”ものであったろうか…?(こよなく大切に思っていることだけは確かなんだけれど、それが果たして本人に“善く”響いているんだろうか。。。と)。
 AI に人格を認める日が来るか否かはわかりませんが、少なくとも、本作のクララほどに率直で献身的なAI が誕生したなら、人格を認めないわけにはいかないでしょうーーー。

 独特の世界観の物語に、作者の想像力と言葉の力を感じずにはおれませんでした。

20210426 【次は…?】 AI とヒトの能力差、貴族やHigh Societyと平民の差、という視点で、サンデル教授の『実力も運のうち』を読んでみようと思います^^。

  

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