「個人情報保護法 現在・過去・未来」
前職でお世話になった関係でご案内をいただけたので、野次馬的に拝聴したJILISの『情報法制レポート』創刊記念セミナー。
先月半ばに、JR東日本が導入した“顔識別”システムに搭載された個人情報に関する問題が発覚したのは記憶に新しいところですが、目下、デジタル改革関連法がらみで、各所の個人情報等の取扱いが一元化されようとしている最中、改正動向の勉強のために聴かせていただきました。
国立の大学・病院・研究機関等での個人情報等の取扱いは、民間に足並みを揃える形になるとか、独法・地方公共団体・地方独法は国と民間の双方を絡めて運用することになるとか…、なんだか考えただけでも気が遠くなります。国立大学は、このコロナ禍で、関連文書を洗い出して民間ベースの個人情報保護法に対応すべく粛々と書き換えを進めているのでしょうか?
一般人も普通に著作物の取扱いをするようになって、著作権法のリテラシーが求められるようになりましたが、個人情報も、一般人でもアレコレ取得・利用する機会は増えています。その意味では個人情報保護法も、著作権法同様“お茶の間法”化しているのに、どっちも分かりにくくて難しいぃ~(T T)。
「個人情報ファイル簿の検索」というシステムが、e-Govに設置されていることを初めて知りましたが、自分の住む地域だけでも、いろいろな個人情報ファイルが保管されているのを見ることができて面白い。
しんみり(…そんたくなく?笑)語り合われたパネル・ディスカッションでは、リクナビ事件や、「xID」の裏番号の話、「Tポイント」の第三者提供の話、「武雄図書館」の貸出履歴の話、「Suica」のデータ販売の話、「LINE」の第三者提供の話、「ベネッセ」の漏えい事件の話、「Panasonic Healthcare」の外為がらみの話…等々から、近年のデータ保護の趨勢をなぞった上、諜報法へも話が及んでいました。
また、「2000個問題」と併せ、Gigaスクール構想と教育ログの関連、捜査のコード化(まるで「サイコパス」の世界!)、生体情報活用停滞の話なども面白かったです。
未来的な話としてパネリストのお三方は、「自己情報コントロール権」や「情報自己決定権」の従来理論へのご批判や、憲法論と個人情報保護法の峻別の要否、処理情報と散在情報の話、コントローラーとプロセッサーの混交の話、分かりやすい法律整備の話などをされておられました。
デジタル庁は、DXの旗を振るのと並行して、個人情報の取扱いをしっかり整理することも求められそうです。あくまでも個人的な印象ですが、旧国営企業の幹部と国家官僚とは今も密接に結びついていて、しかも法律関連事案でも法務の法的判断を吹っ飛ばして、「えいやっ」と実行に移してしまっているのではないか…という感触さえあります。「言いづらいことこそ詳しく説明を!」というお話がありましたが、まさに、それをすれば、実行前にしっかり勉強・検討せざるをえなくなるのに…、と共感しました。
編集者視点で聞かせていただくと、個人情報絡みの本は、ヒト社会の全構成員に関わる話として、作りようによってはものすごく面白いものが出来るんじゃないか?!と思ってしまいました^^。貴重なお話を、ありがとうございました。(cf.情報法制研究7号)
(昨日は岸田内閣発足、今週はノーベルWEEK、月末は総選挙…、なんだかいろいろ慌ただしい…)
【山形県】 伊能忠敬万歩計で、目下山形を南下中。秋田に続き山形も、形状がなんだか人の顔みたいで面白い^^(新潟まであと少し)。
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