「我が国商標法を考えるための5つのテーマ」
別冊Patentの第26号は2章構成でした。第1章は「イノベーション推進に向けた特許の保護対象 ー更なる研究ー」でしたが、第2章が表題の公開フォーラムでの発表の収録でした。
商標関連は目を通しておかねば、と、全編ゆっくり拝読しました。
5つのテーマは、以下。
・悪意の商標出願
・令和の時代のコンセント制度
・商標法における「不使用の抗弁」について
・権利の失効
・商標・商品等表示の混同が生じない場合の特別な保護
いずれも、誰しも問題意識を持っているテーマだと思われます。ことに、コンセント制度については、国際的なハーモナイゼーション上も導入が検討されるべきと思ってはいましたが、記事の中に、「ワールドワイド・アグリーメントを結んだ後でまた個別の国で一個一個そういう面倒くさい手続きをしなければならないのか…」(P.215-216)という事例のご紹介があり、尚更その思いを強くしました。
全体としては、“悪意の商標出願”を出願の審査過程で排除するすべの検討がメインのようにも思え、主に4条1項19号の拒絶理由が議論されていたようですが、個人的な問題意識としては、茶園先生の以下の2か所のご発言にビビッドに反応してしまいました。
・「私の報告対象とはちょっとずれるのですけれども、商標の横取りのような場合については、私自身は周知性を要件にすべきではない、もっぱら主観的悪性を問題とすべきと考えております」(P.271)
・「ある人がこれから事業を展開しますといって、しかし、未だ商標登録出願をしていない状況において横取りされた場合であっても、それでも保護すべきではないかと思います」(P.278)
過日の、Facebookが“Meta”へと社名変更するという話題については、今も狂騒中なのだと思われますが、ここまでスケールの大きい話ではなくとも、零細の先行標章を、大企業が突如採用する、というケースはままあること。そんな時、先使用権が使えればいいのですが、零細のままで周知性が認められない可能性が高い場合には、ずっとビクビク怯えていなくてはならない…というのが、私にはどうにも解せない。実際、ここ数年のうちに2件も、同じようなケースに遭遇しました。本フォーラムのテーマとはズレるのですが、個人が簡単に起業できる時代に、無視できない問題だなぁ…と感じています。
厄介だな、と感じるのは、上野先生がご指摘の“悪意”の法律的な捉え方。「法律用語としては“悪意”というのは知っていることだけを意味するのですけれども、『悪意の商標出願』というときの『悪意』は、いわば『不正な目的』での出願という意味で用いられているように思われる」(P.189)ということですが、「自分が将来的にこの商標を使って商品なりサービスを提供するつもりはない」ということを自分の腹積もりとして知っていても、事後的に正当化のために些細な使用を行なえば、簡単に当初の“悪意”(不正な目的)を覆してしまえる。特許の冒認出願とは大きく異なるこのような性質が、本当に厄介だと思うのでした。
こうした厄介ごとに巻き込まれないためには、事業を始める前によくよく調査して、百年単位の事業計画のもとで予め商標登録出願しておくことなのですが、起業段階では時間もお金も限られて、そんな悠長なことはしていられないのが実情。走りながら考えることを求められる時代の商標の取り扱い、考えさせられます。
【イル バロッコ】 商標には信用が化体する、とはよく言われますが、我が家が絶大な信用を置くイタリアン・バー「イル バロッコ」。リーズナブルなのにボリューミィ&ボーノ♪ パリパリのマルゲリータ、大好きです!
【オデリス ド ドディーヌ】 一方、先日偶然発見した「Aux Delices de Dodine」。フランス語で、「丸々と太らせたおいしいものたち」という意味だそうで、ランチがとってもリーズナブルでした。粗挽きの丸々したステークアッシェが食べ応えあり♪
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