『終止符のない人生』
先週、「羽鳥慎一モーニングショー」に、ショパンコンクール第2位の反田恭平さんが出演されているのを拝見。
どんな方なのかほとんど知らなかったのですが、最後に「ポロネーズ第6番変イ長調【英雄】作品53」を生演奏してくださったのを聴いて、朝からとても豊かな気持ちになりました。このところの殺伐とした数々の出来事を吹き飛ばすかのような、美しい旋律と音色。素敵なひとときでした。
番組内で紹介されていた、彼の『終止符のない人生』という本に、俄然興味が湧き、幻冬舎さんの販促にまんまと乗せられるのを承知で、その日のうちに購入し、一気に読み切りました。
ピアノの腕前以前に、27歳にして抜きんでた人生経験の豊富さに、まずは舌を巻きました。
おそらくは、ものすごく過酷なレッスンを、長い間延々と続けておられるのは間違いないのでしょうが、そんな苦労は微塵も書かれておらず、子ども時代に夢中だったサッカーのこと、モスクワやポーランドへの留学生活、ショパン・コンクールでの戦略、これからの夢などが、歯切れよいソナタのように続いています。いかにもZ世代の先駆けといった雰囲気もあり、先例に囚われず自由闊達にトライしてみる姿勢に、若さと情熱を感じました。
個人的には、モスクワ時代の恩師ミハイル・ヴォスクレセンスキー先生の、「好きな作曲家はいますか?」という問いに対する答え(P.140)と、芸術家の役割に関するチェーホフの言葉の引用(P.208)が、胸に響きました。本来は、芸術に関して、コンクールのような場で順位を付けることに、少し違和感があったりもするし、その順位で人生の方向性すら決まってしまう場合もあることが、過酷すぎるようにも感じます。けれど、そういう場があるからこそ、切磋琢磨したり悩んだり考えたりして、芸術性を深めることもあるのだと思うと、峻厳な山坂を厭っていてはいけないのかな…とも思います。
生きている限り、人生に終止符はない。至言ですね。世界はまさに、生きとし生けるものたちの交響曲。不協和音が鳴ることの方が多い世の中ですが、時に第9のような調和を感じられることもある。。。どうせ生きるなら、美しい旋律の中で伸び伸びと呼吸して生きたいし、そのためには、相互理解と自己鍛錬の両輪を、バランス良く回すことが不可欠なのかもしれませんーーー。
いずれ、チケットが取れたなら、反田さんの演奏会に行ってみたいと思います~。
【ハイエク】次なる読書は、某知人がFacebookで推薦しておられた、ハイエクの『市場・知識・自由』。
これはかなり手こずりそうな気配ですが、ゆっくりと読み進めます^^。
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