「ジョゼと虎と魚たち」
2020年の冬に話題になり、原作にもしっかり目を通して待ち望んでいたアニメ劇場版の「ジョゼと虎と魚たち」。
先月末にやっと、Netflixで鑑賞することができました~♪
実を言うと、原作の田辺聖子さんの文章が、“まるで宝石のよう”と評されていたにもかかわらず、余情の分からない私には、慣れない関西弁がとても粗野な印象で引っ掛かってしまい、どうにも“美しい”とは思えずにいたのですーーー。ジョゼのわがままぶりも、なかなか許容できなかった。。。
けれど、本作を観て、ジョゼの不器用な歪みを、やっと受け入れられるようになり、変わってゆく彼女を美しいと感じられるようになりました。
とかくアクションや動きまくるアニメーションがフィーチャーされがちなBONESさんの作品の中で、ひときわやさしくファンタジックな完成度にも目を瞠りました。過日観た「バブル」が、「人魚姫」の“つづき”だとしたら、「ジョゼ~」は“もうひとつの”「人魚姫」。
クラリオン・エンジェルをはじめとする魚たちが夢や目標の象徴だとしたら、猛獣であるトラは厳しい現実。
恒夫に出逢う前のジョゼは、ひとりでトラに対峙することもできず、美しい魚の世界もひとり胸の内にとどめるだけだった。。。そんな彼女も、外の世界におそるおそる足を踏み出し、いろんな人やモノや場所に触れて、思い描いていた世の中の別の側面にも気づくようになりーーー。
“ジョゼ”というニックネームは、フランソワーズ・サガンの『一年ののち』という作品から取って自称していたもの。世界を知らないからこそ、想像の世界で斜に構えて高慢ちきな態度を貫いていたけれど、知らなかった世界を知るごとに、少しずつ少しずつ心を開き謙虚さを身に付けるジョゼ。。。
私が印象的だったのは、ジョゼを追って事故に遭い、足首と腕を骨折して入院してしまった恒夫が、もう元のようには歩けないかもしれない…と医師から告げられた時のこと。そんな境遇をもちろん悲観してはしまうのだけれど、ジョゼに恨み言のひとつも言うわけでなく、むしろ、車椅子のジョゼと似たような境遇になって初めて、夢や希望に素直に向き合えないジョゼの気持ちを理解して涙を流すシーン。。。
“知ること”、“体験すること”、“共感すること”ーーー、難しいけれど、それなしにはなかなか、人に寄り添うことは出来ないですよね。。。人間と人魚、健常者と障碍者、立場の違いを乗り越えるには時間はかかるけれど、通い合うものがあれば同じ土俵に立てる。
どんな境遇になろうと、心の翼を失わずにいれば、少しずつでも前を向ける…と思わせてくれる作品でした♪
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