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2022年9月25日 (日)

『超AI入門』

20220914  NHKの「人間ってナンだ? 超AI入門」という番組は観ていないのですが、本書は、その制作班と松尾先生の編著。
 番組内の解説のエッセンスを一冊にまとめた上、Googleのジェフリー・ヒントン氏と、Facebookのヤン・ルカン氏のインタビューを加えて構成されています。
 ディープラーニングの仕組みと現状を知りたいと思い手に取りましたが、すでに当番組の取材時から5年以上が経過し、おそらくは様変わりしてしまっているのかもしれません。
 ただ、脳の仕組みを知りたいという好奇心に端を発したAI研究は、まだまだその端緒にすらついていないのかも…とも感じました。脳とAIの関係は、しばしば鳥と飛行機の関係に喩えられています。“空を飛ぶ”という点では飛行機は鳥の能力を実現し、大きく超えるスピードを実装している。同様にAIも、“将棋を差す”とか“画像診断する”とかいう点では脳の能力を実現し、大きく超える精度を実装するようになってきた。けれど、鳥の羽ばたきをそのまま取り入れていないのと同様、AIも脳の機能をそのまま取り込んでいるわけではない。そもそも、脳の学習の仕組み自体が未だ解明されていない…。似て非なるものの創造には辿り着いたものの、「脳の仕組みを知りたい」という当初の疑問へのアプローチが、ディープラーニングの先にあるのかどうかはわからない。。。
 松尾先生の解説からは、楽観的で明るい展望を感じつつ、むしろ人間の限界とその先について考えさせられます。
「結局、人間というハードウェア自体に非常に大きな制約がある。特に「情報の保存」と「通信」において大きな制約がありました。ところが、もし脳の機能を拡張してデータをいくらでもやりとりできるようになれば、人間が全体として知識を共有して、全体として学習し、進化していくことも可能になるはずです」(p.162)
 私自身、“身体”という制約を感じずにはおれませんが、機械に学習させるのに要する電力に比べ、人間の学習に要するエネルギーってどれほどなんだろう?というのは素朴な疑問。人間って実は、すごい省エネに出来てるんでは??
 著作権分野で話題の、人間の“創造性”・“創作性”ってナンだ?と思ってAI本を読み始めたものの、ますます分からなくなる…というのが正直なところ。
「「知能という存在に迫りたい」という研究者たちの目的は、煎じ詰めると、「人間の最も強力な武器であった知能の仕組みを知りたい」と同時に、「知能を除いた人間の人間性を知りたい」ということだと思います」(p.72)
 そもそも“創作性”って、上記の「知能の仕組み」から生まれるのか、はたまた「知能を除いた人間性」から生まれるのか、その両方のブレンドなのか…? まぁそもそも、そんな分離は不可能だと思いますが、知能の仕組みがAIで再現できるのなら、知能以外の人間性がブレンドされてはじめて“創作性”と呼ぶべきものが生まれるような気がしなくもなく…。
 少なくとも、ディープラーニングの“誤差逆伝播法”とやらは、ニューロンのネットワークの強弱をコントロールするプログラムのようだから、そこにプログラマの創作性が発揮されたとしても、それは入出力データのジャンルに対する“人間性”の発揮とは思えず、あくまでプログラムの創作性のように思われました。いやいや、単なる私の感想なので、是非いろんな人の意見を聴いてみたい!
 次は『基礎からわかるディープラーニング』に行ってみよう~♪

【物理学会誌】本書は、AIと人間とのかなり先の未来を見せてくれたのに対し、今月の物理学会誌には「機械学習とロボットは、研究者を「自由」にする」という、即実践を目指す記事がありました。AIやロボットを物性実験に使うことで、セレンディピティの機会が増える、という解説を面白く読みました。また、来月号では「観測的宇宙論への機械学習の導入事例」という記事が掲載予定だとか。これらを見ても、実用化が各所で進んでいるのが実感できますね。

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