『地球にちりばめられて』
多和田葉子さんの表題作を先週読了。(珍しくゲームに夢中になり、だいぶ遅くなってしまいました^^;)
すごくすごく愉快な読書でした。帯には「言葉のきらめきを発見する青春小説」と書かれていたけれど、ある種SFファンタジーのような楽しい余韻と、島国日本の宇宙的な魅力を自覚する旅から帰ったかのような満足感ーーー。(以下ネタバレ注意)
登場人物は大きく7人。そのうちの6人の独白調の十章からなる、舞台劇のような構成。アニメ化しても面白いかもしれません!
何より、言葉や音や光に対する感覚が呼び覚まされ、コミュニケーションについて新鮮な悦びが感じられます。
言語学者って、世界をこんな風に観ているのかなぁ…と面白くも感じました。言葉に関する感覚に鋭敏になるために、商標に係わる人にも是非読んで欲しい!!♪
つい先日偶然、『「超大陸パンゲア」に現代の国境が描かれた画像がスゴイ』というネット記事を見たばかりだったので、日本人とエスキモーはかなり近しい関係なんじゃ…?などと想像しながら本書を読みました(笑)。
“ネイティブは日常、非ネイティブはユートピア”って文がありましたが、本書に登場する人たちには、それぞれ所謂母語というものはありつつも、いろんな言語を操りながら関わり合います。Hirukoという、原因は明らかにされないながらも消失したらしき日本の、新潟出身の女性は、自ら編み出した(エスペラントのような)パンスカ(汎スカンジナビア語)という言語も駆使するのですが、これがとっても“物理的な言葉”で魅力的でした^^。
本書を読んだ後では、“ネイティブ”という言葉をこれまで通りの感覚では使えなくなります。“言葉は変化するもの”というのは言い古されていますが、表面的な変化でなく、もっともっといろんなものに影響を受けているのが言語であって、その日の気分にすら感化されてしまうほどデリケートで、武器にも鎧にもなりうるほど堅牢で、音として発しなくても通じてしまう場合もあるような、不可思議な存在。
まぁ、読んでいただくのが一番です! そして、池澤夏樹さんの解説も秀逸♪ 後半の転がるような展開に乗っかった後は、ただ旅立ちたくなること請け合いです^0^♪ ノーベル文学賞応援読書でしたが、楽しいひとときをありがとうございました。
【シンプルな情熱】今年のノーベル文学賞受賞者アニー・エルノー女史の『シンプルな情熱』というのも、いずれ読んでみたいと思っています。オートファジーならぬ、オートフィクションというジャンルなのだとか。自分を客観的に突き放して表現するって、どんな作風なんだろう…?
また、友人から『運転者』という本もオススメいただきました。これもまたいずれ! 『ストロベリー戦争』も入手済だし、まだ『基礎からわかるディープラーニング』も読みかけだし、大変だぁ~!
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