『ストロベリー戦争 弁理士・大鳳未来』
先月、表題の書籍を読了。
農作物の品種開発者やブランド/商標担当者には是非是非読んでいただきたい、商品名/商標管理の教科書にもなりうる本でした!
クリスマス目前のこの時期、イチゴに思いを馳せながら、ハラハラドキドキした後でHappyな年末年始を過ごせそうです^^♪
(以下、ネタバレ注意)
去年、ロイヤルクイーンという見事なイチゴを頂きましたが、あの栃木産の苺は、2010年には商標登録され、2011年には品種登録もされていました。日本の農産品は素晴らしいものばかりですが、特に苺は、プチトマトと並んで食卓の彩に欠かせない上、ショートケーキやパフェのクオリティを左右しますよね。
農産物の品種やブランド管理では、種苗法による品種登録、商標法による商標登録や地域団体商標登録、地理的表示法によるGI登録などがありますが、本書は、突然変異により生まれた苺の新品種を、地域の基幹産業にして盛り立てようという人たちと、権利保持によるブランド・マネジメントでロイヤリティ収入を得ようとする商社との、手に汗握る駆け引きの物語。
せっかくの画期的なイチゴの新品種を開発したにもかかわらず、鼻の利く商社マンに商標を先取りされ、販売直前で警告書を送りつけられた苺農家の人たち。苦労して作った苺が売れなければ、農家はすぐに立ち行かなくなってしまう。さぁどうしようーーー。
最終章(第5章)直前まで、この窮地をどう切り抜けるのか、うまい方法が見当たらずに途方に暮れながら読み進めました。
種明かしをされてみれば、「なるほど~!」と膝を打ちましたが、実際にはそううまくいくとは考えられず、だからこそ本書を、広く農業従事者やブランド管理者の方々と共有したいと思ったのでした。
今回のお話は、国内でしのぎを削る顛末でしたが、種苗の国外持ち出しと、外国での商標先取りこそが、これからの農業の懸念材料。その意味では、商社マンの提唱したマネジメント・プロジェクトは、実はとても大切で、生産者とマネジメントのプロフェッショナルとが良好に手を携えて、世界を席巻するくらいのつもりで打って出るような計画こそ欲しい…と思ってしまいました。
著者の南原氏は現役のインハウス弁理士さんと聞いています。日々、本書のような侵害がらみの警告を打ったり受けたりしておられるのでしょうか…? 事実は小説より奇なり、で、毎日がエキサイティングなのかもしれませんねぇ。前作のVチューバーの話も楽しませていただきましたが、本書は面白い上に勉強になりました! ありがとうございました!
本書の読後は、無性にイチゴのショートケーキが食べたくなって…、つい…、季節外れにもかかわらず、夫を付き合わせて果樹園のイチゴのズコットを買って来てしまいました^^;;。イチゴ農家さんのご苦労を思いながら、甘酸っぱくて真っ赤なイチゴを堪能致しました~♪
参考までに、イチゴ関連メモ。
・「女峰」品種登録:栃木2号→女峰(2000/1/24失効)
・「とちおとめ」品種登録:栃木15号→とちおとめ(2011/11/22失効)
・「なつおとめ」品種登録:栃木25号→なつおとめ
・「スカイベリー」品種登録:栃木i27号、商標登録:スカイベリー
・「ミルキーベリー」品種登録:栃木iW1号、商標登録:ミルキーベリー
・「とちあいか」品種登録:栃木i37号、商標登録:とちあいか
・「ロイヤルクイーン」品種登録:001-16RQ、商標登録:ロイヤルクイーン
・「あまおう」品種登録:福岡S6号、商標登録:あまおう
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