『日本のアニメ監督は いかにして世界へ打って出たのか?』
2022年最後の読書は、表題の新書。
「よくぞまとめてくれました!」という感じのデータBOOK的にも読める一冊。
著者としては苦渋の選択でピックアップされたのでしょうけれど、“海外知名度”と“ビジネス”という切り口で、日本を代表するアニメ監督数名にフィーチャーし、ここ半世紀ほどの日本のアニメ業界の変遷をうまく整理してくださっていました。
宮崎駿、高畑勲、今 敏、湯浅政明、細田守、新海誠、富野由悠季、庵野秀明、大友克洋、押井守、りんたろう、川尻善昭、神山健治、荒牧伸志、外崎春雄、岡田麿里、伊藤智彦、朴性厚、山田尚子、石田祐康といった錚々たる顔ぶれについて、年表とともにプロフィールを概観し、世界の各種映画祭やイベント、配給会社や制作会社の解説も充実した、読み応えたっぷりの一冊!
私は単なるアニメファンだし、あらゆる作品を観ているわけでもなく、業界の詳しいことには疎いわけですが、それでも、“アニメに育てられた”という自負があります。高度成長期、親が忙しいのをいいことに、ずいぶん色々なTVアニメを観て来ました。自分がまがりなりにも良心的な大人になれたのは、これらの作品群すべてのおかげと思っています。私のような子供時代を過ごした多くの人たちによるアニメ理解の醸成が、アニメーション映画も実写映画と同じ土俵に立つエンタテインメントだという包摂感を育んだと思っています。
本書の前半は、海外で評価されるアニメ監督という大きな括りで映画作品を中心に展開しますが、著者の数土さんは決してそれだけを評価軸に見ているわけではなく、映画の素晴らしさと並び、TVアニメの素晴らしさも、OVAの素晴らしさも、等しく讃えていることに嬉しくなりました。
また、昨今の女性監督の活躍にもスポットを当てていることに、強く共感! アニメに限らず最近は、様々なクリエイティヴシーンで、女性が今まで以上に台頭してきているのを感じます。配信による鑑賞者が増える中、アニメビジネスの構図もさらに変容する予感とともに本を閉じました。
今回は“監督”という切り口での分析でしたが、個人的には“キャラクターデザイン”や“担当声優さん”による訴求力分析にも期待してしまいます。かつて「100万の命の上に俺は立っている」というTVアニメの第一話 で、著作権がらみで実験を続ける「いらすとや」さんの絵柄で全編構成するといういまだかつてないトライアルを観て度肝を抜かれました。また、絵柄のみならず、「ポプテピピック」の声優さん替えのように、声色が違うだけでも、作品の印象がまったく変わってしまうことも痛感しています。こういうのを見るにつけ、「アニメは総合芸術だなぁ」と思うわけです。
どんな人財がアニメ業界に入って来るかは、時代によっても変わるのでしょうが、クリエイターを志す人はどんなジャンルであれ、“人の心を打ったもん勝ち”だと思うので、これからのアニメも大いに楽しみにしている私です♪ 本書を読んで「あ、アレもまだ観てなかった!」「これもまだだった」という気づきがあったので、観てみないと~♪
【君たちはどう生きるか】「来年はどう生きるか?」ーーー来年は、これを観るためだけに^^;日々がんばりまっす!
7月14日が楽しみすぎるぅぅぅぅ…^^;;;。それにしても、今月半ばに公開されたポスタービジュアルのあの鳥は、一体何でしょう…??? 火の鳥か?!
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