「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」
2022年最後のアニメ鑑賞は、安彦良和先生の「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」。
“子どもたちと戦争”という、等身大の戦いを見事に描く、安彦先生の乾坤一擲の佳作だったように感じます。(以下、ネタバレ注意)
ククルス・ドアンは、ジオン公国軍のサザンクロス隊で歴戦のMSパイロットとして活躍していたものの、戦争で親や身寄りを失くしたたくさんの子どもたちを見続けることに耐えきれず、彼らの保護に専心するために脱走。ある島で、子どもたちを守りながら、ひっそりと電気も使わずに、隔絶した暮らしを営んでいたのですが、ジオンはこの島のポイントCAに備えられたミサイルを発射するためにサザンクロス隊に特殊任務を課す。一方、連合のホワイトベースは、この島の偵察任務に就き、アムロは島で行方不明にーーー。
ドアンに保護されたアムロは、島の子どもたちと数日を共にするうちに打ち解けて、一緒に畑を耕したりポンプを修理したり食事したり…。けれど、アムロが搭乗していたガンダムは、ドアンによって隠されていてーーー。
印象的だったシーンはいくつもありますが、子どもたちが就寝前に唱える“ドアンとの明日の約束”が微笑ましかった!
「みんなと仲良くします」
「助け合って、自分の係の仕事をします」
「好き嫌いをしないで何でも食べます」
「水は大切に使います」
「大きい子は小さい子を守ってあげます」
「わがままを言いません」
「部屋はきれいに使います」
など、日々の小さな約束ながらも、そういうルーティーンを子どもたちに課して、助け合い努力することの大切さを日々浸み込ませている様子に、教育の理想を見せられているようでした。
また、ドアンが秘密裏にライフワーク的に取り組んでいた“大事な仕事”というのが、ジオンのミサイルを無力化する作業だったのもスゴイ。
さらに、そのように改造されて不発に終わったミサイルを見て、“パリもロンドンもニューヨークも燃えていない”ことを部下に確認し、「私の部下にも、文化を愛する者がいたということか」と、歓喜していたマ・クベも、ちょっとカッコよかった^^。
(ラストでアムロが、ドアン専用ザクを海に落とすシーンは、ちょっと複雑な気分。それならガンダムも一緒に落とさなきゃいけないんじゃ??…^^;;。)
ガンダムシリーズの魅力は、“心の揺らぎ”が見えること。それは、考えたり迷ったり恐れたりする中で、また、人と関わることで、随所に見られます。現在の混迷の中でも、大人がもっと、“戦う”ことに悩む姿を、子どもたちに見せるべきなんじゃないかなぁ…と思う次第です。
森口博子さんの「Ubugoe」もよかったです♪
政情不安が延々と続いた2022年を締めくくるにふさわしい鑑賞でした。素敵な作品をありがとうございました。
今年こそは、戦火が収まることを期待しつつーーー。
【ウクライナ戦争が問う我々の人間性】小泉悠氏のエッセイが、ククルス・ドアンの島の営みと、とてもシンクロして感じられました。
(それにつけても、“水星の魔女”の第1期ラストは衝撃。。。私だってそりゃぁ、家族の血を狙って寄って来る蚊を見つけたら、バチンッとヤっちゃいますけれども…ですけれども…^^;;;;;)
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