『天涯の花』(澤田ふじ子)
先週の日曜日、澤田ふじ子さんの『天涯の花』を読了。
小学生時代の絵の先生が、折に触れて絵手紙をくださる中、原田マハさんの本をよく回してくださるのですが、今回は珍しく、華道一派創始者を主人公にした本をオススメくださったので、読んでみました。
個人的に、花嫁修業的なお花やお茶というのはどうも苦手で、「美しいと思えば、流派や段位なんてどーでもいい…」と思ってきたのですが、本書を読んで、「一甫のように、漂泊の中から宇宙の哲学に至った未生流なら、習ってみたいかも…」と思いました。ある種、自然そのものと、その中に潜むフラクタルに叩頭するかのような思想。俗世の中で理想を追究する姿勢。。。
江戸時代の浅間山の大噴火の頃、婿養子先で筆結いの内職に精を出していた内蔵助。舅にいびられ、学友の非業の死に直面し、養子先を出奔した後に妻の入水の報せを聞くなど、とにかく不運続きの二十代。偶然、浅草で源氏流大花会の催しを観て、初めて生花と出逢うわけですが、そこから流派を創始するまでに、全国各地を放浪しつつ、行く先々でパトロン的な人たちに支えられることになるのは、内蔵助の人柄のなせるワザだったのでしょうか。。。
未生流創始者の、二十代から絶息までを、淡々とした筆致で描いた本作は、江戸時代の、貧しいながらも質実剛健を貫きながら真摯に生きた旗本や御家人たちをも描いていて、侘び寂に通じる日本文化の土壌の背景に触れられたような気がします。
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