他人の氏名等を含む商標の商標登録について
先月末、表題のWebinarを聴講。
「他人の氏名を含む商標の登録要件緩和」については以前から気になっており、いいタイミングでの聴講です。
弁護士先生が、商標法第4条1項8号を、人格的利益保護の観点から解説くださいました。
漢字と“かな”の名前において、同姓同名が発生する割合を調べたおもしろい研究があるようですが、10万人以上の集団では10%ほども同姓同名が発生する可能性があり、1千万人以上ならほぼ確実に同姓同名が発生する模様…?!
ところが、商標法では「他人の肖像又は他人の氏名若しくは名称若しくは著名な雅号、芸名若しくは筆名若しくはこれらの著名な略称を含む商標(その他人の承諾を得ているものを除く。)」は登録を受けることが出来ません。自分の名前を商標に含ませたい場合等、同姓同名のすべての人から承諾を得ない限り拒絶されるというのは、“出願人に厳し過ぎるのでは?”というコンセンサスが醸成されてきた結果、昨年から、要件緩和が検討され始めたとのこと。
つい先日、戸籍法改正の要綱案が示されたばかりですが、このネット時代、キラキラ・ネームはいざ知らず、子どもの名付けの際にはやはり、一度はサーチをかけるものでしょうが、世界に唯一無二の命名をするのは至難の業。
日本以外の主要国の多くでは、他人の氏名と同じ出願であっても、その他人の氏名が“知名度”を得ていなければ、登録を許容する傾向があるそうで、「同姓同名は一定程度存在するものだ」という認識のもとでの制度設計になっているということでしょう。海外では、スターの卵の名前等についての濫用的な出願がないのか、そんなケースがあった場合、事後的にどんな対応がなされたのか…を知りたいと思いました。
あと気になったのは、“歴史上の人物”について。ネット時代は、一般人でもある程度“名を遺す”ことは出来るような気がするのですが、デジタルアーカイブ時代の“歴史上の”とは何なのか? 4条1項8号は基本的に現存する人物に限られますが、名声ある故人名については7号の公序良俗違反が用いられることが多いものの、ネットに溢れる個人名や略称等の“周知・著名”の判断も、次第に難しくなるような気がするのでした。。。
| 固定リンク
「学問・資格」カテゴリの記事
- 調査の果て(2024.07.30)
- 論文や査読や明細書と、OpenAI(2024.05.07)
- 知識と図書と図書館と…(2024.03.26)
- 令和5年不正競争防止法等改正説明会(2024.02.29)
- コンセント制度の導入と氏名商標の要件緩和(2024.02.16)
コメント