『ロシア点描』
先週、表題書籍を読了。
著者は、目下の世界の緊張状態が始まった頃にやたらとTVでもお見掛けした方ですが、コメント等を聞いたり読んだりする中で、軍事とは程遠い、やわらかでやさしい雰囲気を感じていました。
そして今回の本も、そんな小泉さんのテイストが滲み出る、素敵な“語り下ろし”エッセイでした^^。
人間、身近でないモノにはどうしても恐れの感情を抱きがちですが、ロシアという大国の歴史や常識や人々の暮らしを、少しでも身近に感じてもらいたいという思いが、ページのそこここから感じられました。
ただ、そこはそれ、ご専門は軍事研究ということで、最後の六・七章は、長年の考察に裏打ちされた、国際関係論・権力掌握論が展開され、ドキドキしながら読みました。
私が最も考えさせられたのは、六章の「プーチン大統領の世界観」という項。「独自の核戦力を持って非同盟を貫ける“大国”だけが主権国家」であるという考えに基づけば、日本はアメリカによって主権を制限された国と見られてもおかしくない、という解説でした。無論著者は、そうした世界観を分析しつつも、21世紀はもっと個々人のアイデンティティの持つ力が侮れない時代だとも看破しておられましたが。
なんとなく、いつも同盟国の顔色ばかり窺って、自らの寄って立つ哲学が希薄に感じられる自国を不甲斐なく思う反面、ポストポスト冷戦時代の“平和”のあり方は、どんな形が安定的に継続できるのか、今後の動向がますます気になるのでした。
それにつけても、ロシアの花屋さんは24時間営業だという話にも驚いたし、“森の民”たるロシア人は、ダーチャ(別荘)での自家菜園に余念がない等、生活に花や植物や森が欠かせない自然派志向であることが意外で、相互理解は大事だよなぁ…という結論に至りました^^;;。
パワーバランスという、まさに動的平衡を保つのが至難の業である世界を痛感したのでした。
【朝日生命大手町ビル】昨年10月から解体準備に入ったくだんのビルですが、今やすっかり覆いに囲まれ、周辺環境も激変しています。数ヶ月後には一体どんな景色になっているのでしょう…?
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