『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』
表題の書籍を先週読了。
近年は極度に細分化/専門化された研究者の仕事。血税を使っている場合は、相応のアウトリーチは必須だと思われますが、よほど工夫しないと、専門的な内容は大抵、門外漢にはチンプンカンプン。本書はそういう意味で、一般人が謎の専門家の活動内容に触れられる格好の還元形態かもしれません^^;。
本書の著者は、生態学者あり、鳥類学者であり、ヨシゴイ学者(?)の川上和人氏。
そして、どう考えても8~10歳ほどサバを読んでるのでは…?と思われるほどの1960年代からのサブカルオタクでもあられるようで…^^;;。
(担当編集の方は、散見されるJASRAC案件的な文章表現に、さぞかし頭を悩ませたことでしょう~笑)
どのエッセイも抱腹絶倒のエピソード満載で、10万人に1人の割合とも言われる鳥類学者の日常というものを、ワクワクしながら知ることのできる楽しい本でした。中でも私がとても興味深く拝読したのは、第五章の「鳥類学者、何をか恐れん」の章。気づくと、この章にだけ付箋をやたら立てていた自分。。。
「日本の鳥類は種類が少なく行儀よい。」(P.166)という、ボルネオ島やその他の国々と比較した日本の状況を指摘されて膝を打ったり、「インドネシアを含む東南アジアは、日本の鳥とのつながりが深い。」(P.169)という、世界の同心円構造への気づきと、環境保護の考え方に強く共感したり、「我らは、人類共通の財産である生物の多様性を確保し、そのもたらす恵沢を将来にわたり享受できるよう、次の世代に引き継いでいく責務を有する」という生物多様性基本法の紹介(P.174)に、ノアの箱舟的責任を感じたり、「外来生物問題は、絶滅なき侵略というグローバリゼーションによる世界均質化の問題を孕んでいるのだ。」(P.179)という指摘に、“外来生物”も元はと言えばヒトに“どっかから連れて来られた”被害者では…?と思わされたり。。。
とにかくこの第五章では、空や月や火星にまで手を延ばそうとしている人類こそが、史上最恐の自発的外来生物だと思わされて仕方ありませんでした。この流れを止めることは出来ないのでしょうけれど、そういう自覚を持って、青い地球をどう保全するかを、真面目に考えたいな…と思いました。
それにつけても、西之島の進化というのは本当に、生態学においてミニ・ビッグバンをリアルに観察するかのような貴重な史料の宝庫なのですね~!
明日はまた、『そもそも島に進化あり』という本の文庫版が出る模様♪ 鳥の観察に目覚めた私は、川上先生の本を契機に、生態学にもちょっぴり目覚めてきたかも~!
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