Patent Vol.76
月刊パテントが電子書籍化されて以降、なかなか、きちんとダウンロードして全編目を通せずにいたのですが、今月号の特集が「知財関係者の自叙伝」ということで、お世話になった方が何人か掲載されていたため、久々にゆっくり拝読しました。
弁理士会の副会長/会長を務められた、登録番号4ケタの大ベテランの先生方の自叙伝にはじまり、日米の大学の先生方や元知財高裁所長など、錚々たる顔ぶれの半世紀+α…。お一人お一人の人生そのものも興味深い上、20世紀~今世紀にかけての知財の重要判例に関わって来られた生き字引のような方々の言葉が、とても勉強になりました。
まず驚いたのは、1997年頃、特許庁の「独立行政法人化」の動きが勃発していたということ?! もしこの時、特許庁が独立行政法人化されていたら…と考えると、色々、今とは違う雲行きだったのでは…と思いました。
また、使命条項の創設にあたり、弁理士法第4条では、未だ地理的表示や種苗法に関する代理業務が明確に認められていないことや、経済安全保障推進法に基づく特許出願非公開制度の「保全審査」の代理人にもなれない、ということを嘆いておられる先生の提言にも、少なくとも、弁理士法と知的財産基本法の平仄をとる努力は必要ではないかと感じました。
大学の先生や、元裁判官の方々の旅路も、それぞれにエキサイティング!
『知的財産法判例集』で読んだ様々な判例に、先生方ご自身が関わっておられたりして、プロ・パテント時代の真っただ中を進んで来られたんだなぁ…と感動。
法律を勉強する前の私は、当事者の観点で何かを主張するのは楽だけれど、中立的な立場の裁判官も、“正しい”ことを見抜けばよいのだから、それはそれで分かりやすいのでは…と、安易に考えていました。
けれど、「法の解釈」を戯曲の舞台に喩えて描かれていた先生もおられるように、社会の中での問題解決は、理系的課題解決とは異なり、その時代の価値観や法体系、ビジネスのスピード、国際的な協調、各場面での相互整合性など、舞台のあらゆるものを吞み込んだ上で、“インテグリティとしての法”を追究することなんだな…、と痛感しています。
長年、多くの法的課題を考え続けていらした先生方ですら、いまだに「法の正義に基づいた紛争両当事者間の衡平の地点」や「衡平の理念、紛争の一回的解決と訴訟経済」を模索しておられるとの告白に、あぁ、時代はいつも動いてるんだよな…と感じたのでした。
今まさに、「空飛ぶクルマ」の社会実装に向けた、倫理的・法制度的・社会的課題の研究に従事しておられる先生の寄稿もあり、“起きてしまったこと”の解決だけでなく、“未来”を予知した課題解決という仕事もある、というのも面白い発見でした。
本来、弁理士の仕事というのは、“よい未来”を思い描いて、それに資することが本然なのでしょうね~。
個人的には、何人かの先生方が書いておられた、“リスクとチャンスはコインの裏表”と“幸運の女神には前髪しかない”という教訓を胸に刻み、(もうそんなリスクにもチャンスにも遭遇する機会は少ないでしょうが^^;;)、本誌で紹介された先生方の心意気を見習って、チャレンジを続けたいと思います♪
【「それパク」特別コラム】本誌の巻末に、“初めての「それパク」監修ものがたり”というコラムがあり、それも楽しく拝読しました^^。本作りも、色々な人が関わるものですが、ドラマ制作はその比ではなく、数百人規模にもなる、というお話や、脚本家は弁理士に似ている、というお話など、興味深かったです。第1話から4話までの各エピソードの裏話では、正確性と馴染み良さの狭間で呻吟された監修者の先生のご苦労がよ~く分かりました!(そして、脚本家という仕事の大変さも…^^;;;)
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