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2024年4月12日 (金)

『森と氷河と鯨』

20240405_8  先週、表題の文庫を読了。
 写真家の星野道夫さんが、アラスカやカナダやシベリアに住むモンゴロイドに伝わる神話に登場する、世界の創造主たるワタリガラスの数々の物語を追いながら、遠い昔、アイヌからアラスカへと渡ったと思しきクリンギット・インディアンやエスキモーの末裔を訪ねて、時間を遡行するかのような一冊。
 星野さんの写真集に載っていた彼らの写真を観た時、誰しもが、日本人とどこか繋がりがあるのでは…と感じるのはないでしょうか。。。星野さんがなぜ、ワタリガラスの神話や、彼らの暮らしぶりに関心を寄せていったのか、詳しいことは分かりません。
 けれど、"見えないものに価値を置いて生きる"彼らに、強く惹かれていたことは確かなのでしょう。
 昨今の文明が、物質的な消費社会であることは疑うべくもなく、タイパ、タイパと効率重視で日々慌ただしく時間を浪費するかのような暮らしぶりなのに対し、本書に登場する人たちは辛うじて、いまだ柔和でゆっくりとした時の流れの中にいるように感じます。
 森も氷河も鯨も、決して一日にしてならず、深く厚く大きくなるまでには長い長い時間を要するーーー。
 刹那に生きる現代人と、悠久の時を生きるものもの…。
 せめて精神だけは、折に触れて悠久の時を俯瞰しながら生きたいと感じます。

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