映画「オッペンハイマー」
「職業柄観ておかねば」と言って、溜まりに溜まった有給消化も兼ねて夫が映画「オッペンハイマー」を観に行くというので、私も溜まりに溜まったポイント消化を兼ねて追随(笑)。
これまで、原爆開発の本や、コペンハーゲン学派の舞台や、『はだしのゲン』の漫画、『この世界の片隅に』の映画等に触れ、それなりに興味関心は抱き続けているし、科学史の本、特にハイゼンベルクについては、かなりアレコレと調べて来たつもりですが、オッペンハイマー視点で原爆開発を捉えようとしたことはありませんでした。そして、映像の力はやはり凄まじい。。。
以下、ネタバレもあるかもしれませんので、未見の方はご覧になりませぬようーーー
観る人によって、感想はさまざまかと思いますが、私には"権力の虜たちの闇"の映画のようにも見えつつ、垂涎の物理学黄金期における一人の学者の数奇な人生を描いた傑作にも見えました。"ナイーヴな科学者の飽くなき探究心の悲劇"のようにも見え、捉え方の難しい映画でした。
政治家と科学者とか、資本主義者と共産主義者とか、コントロールする側とされる側とか、凡人と天才とか、世の中には、価値観を異にする様々な対立項が存在します。だからこそ諍いはなくならず、戦争なんていう非常事態も起こり得るわけですが、恐怖で一方を抑え込むことが、何の解決にもならないということは、すでに歴史が証明しているにもかかわらず、そうするより他に道がないように思えてしまう双方の乖離。。。
どう見ても天才的に見えるオッペンハイマーですら、「彼も人間だったんだな…」と哀切に見えてしまうヒトの業…。
白でも赤でもない中庸を認めようとしない、二律背反を許さない単純な世間と、「光は波であると同時に粒子である」という一見矛盾するような概念を受け入れた量子力学の研究者の複雑さとの対比が、非常に際立った作品でした。
いかにも好々爺然としたルイス・ストロースの、粘着的な嫉妬や逆恨みも、ある意味、人間の複雑さを如実に示していて、ちょっとしたボタンの掛け違いで、ヒトの人生は容易に軌道をずらすことが痛感されます。
時系列が錯綜していて、歴史的な流れをきちんと把握するのが難しかったので、もしこれから観に行かれる方がいらっしゃれば、以下の時系列だけは把握して行かれると良いのでは…と思います。
1943年:オッピー、ロスアラモス国立研究所所長に
1945年:トリニティ実験成功⇒終戦
トルーマン大統領とホワイトハウスで対面
1947年:アインシュタインに代わり、プリンストン高等研究所所長に任命
1954年:赤狩りの風潮の中、機密保持許可をめぐる聴聞会に付され、セキュリティ・クリアランス取消に
1959年:公聴会にてストロースの商務長官指名は46対49で否決(J.F.Kennedy否定派)
いずれにしても、本作で描かれた第二次世界大戦の渦中と戦後は、陰湿な政争の絶えない時期だったんだなぁ…ということが分かります(今もいずこも変わらない??)。
これからゆっくりパンフレットを読んで、余韻に浸りたいと思います~^^。
【三体】Netflixの「三体」のシーズン1を観終えました。こちらも科学技術の進展の話。人間の複雑性…など、上記作ともやや共通点が見受けられ…。シーズン2も楽しみにしています。
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