2023年11月27日 (月)

『壊れた魂』

20231120  日々溢れるように流れて来る数多の書籍紹介の中から、なぜ私が迷いなくこの本を選び、その日のうちに書店に探しに行き、読み始めたのかは分かりません。
 読み終えた今思えば、”この時代”がそうさせたとしか思えない。
 今の世界が、20世紀初頭当時の世界よりマシになっているのかは、正直よく分かりません。
 当時、『君たちはどう生きるか』を書いた吉野源三郎氏も、今『壊れた魂』を書いた水澤章氏も、揺るぎない気持ちで勇気をもって書かれたという点で、相通ずるものがあります。
 “理性的に考える”ことの大切さを、平易な言葉で訴えるこれら二作からのメッセージを心で受けとめたなら、ただちに武器を置かなければならないと感じるはず。誰がいい誰が悪いではなく、人が相争うということが、巡り巡れば無益でしかないことを肝に銘じなければ。。。
 地球というパブリックなものの、どこをどう切り取っても、所詮は誰のものでもないし、誰一人として他の誰かに服従する必要などないのだからーーー。人生は、協奏曲を奏でるように、自分を活かすとともに他の誰かを活かしてこそ!と思える作品です。

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2023年10月10日 (火)

『木挽町のあだ討ち』

20231005  先週、表題の書籍を読了。
 実家に転がっていたのをもらって帰って来て、スキマ時間にチョロチョロと読んでいました。
 近頃はあまり、芥川賞・直木賞等の受賞作に手を出さなくなっていたのですが、父が「面白かったよ」と言っていたのにノセられ、読んでみました。
 久々の時代小説でしたが、面白かった♪
 構成もさることながら、個人的には、大筋のストーリーよりも、前段に置かれた、各登場人物の来し方の物語に惹かれました。
 江戸にはいろんな人がいる…という、世界の広さを体感した地方の若いお武家様が、自分の気持ちに正直に、まっすぐな道を進めるようになるまでの顛末が、舞台劇のように展開されます。
 人情モノに飢えた方は、是非ご一読を!

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2023年9月 6日 (水)

『星を継ぐもの』

20230829_05  先月末、表題の書籍を読了。
 ハードSFの巨匠と謳われるJ.P.ホーガンの作品なのに、なんと初読です^^;;;;。
 ずっと読みたかったものの、新版化でようやく手を出すことが出来ました。
 ストーリーやSF設定もすごく予知的でスゴいのですが、それよりも、人間や地球や宇宙へのまなざしと、真理に迫りたいというサイエンティストの矜持と、学際的方法論の真摯さがスゴい!!!
 分断化が進んだ昨今読むと、果たしてこの先、今の人類は、ルナリアンたちのような自滅の道を進むのか、ホモ・サピエンスとして和平的に危機回避するのか、種としての進化を見守る感覚に陥ります。
 ある謎に直面した人類が、総力を挙げてその謎の解明に挑む過程を克明にたどる物語なのですが、読んでいるこちらまで、事実の因果関係や、科学的な説得性について考えさせられるという構成が秀逸!
 いまどき、「科学的根拠」という言葉があちこちで聞かれますが、その根拠を示すためには、様々な分野の数多くの事実の蓄積と関連性の証明が必要であって、本来は数ヶ月や数年の分析だけで断言できることの方が少ない。それでも、薄弱な根拠でも前に進むしかない場面が多いのも確か。この匙加減のバランスが難しいわけですが、本書に登場するUNSA(国連宇宙軍)のグレッグ・コールドウェルのように、あらゆる専門家を束ねて各々の本領を発揮させ、問題解決に当たれるような人が、この時代には貴重なのだろうなぁ…と感じました。
 創元SF60周年記念で、本作に引き続き、『ガニメデの優しい巨人』、『巨人たちの星』、『内なる宇宙』、『ミネルヴァへの航海(仮題)』と、新版5部作が続々と刊行予定とのこと。ゆるりゆるりとでも、全作フォローしたいと思っています♪

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2023年7月29日 (土)

『君たちはどう生きるか』

20230723_02  ジブリの最新作に感化され、映画鑑賞直後から読み始めた表題書籍。
 先週末読み終えました。
 概要は漫画版で知っていたのですが、やはり活字本の初版の重みは格別ーーー。
 本書は、1937年7月という、軍国主義が勢力を増して来た時代に刊行されたということだけをとっても、編纂者や著者の並々ならぬ使命感を感じます。
 私が購入した岩波文庫は、1982年11月16日に第1刷発行の、2023年1月16日第95刷!
 本当に長い間、人々に読み継がれてきたんですね…。これまできちんと読んで来なかった自分が恥ずかしい。。。
 本書は「日本少国民文庫」全16巻のうちの1つとのことですが、体裁は子ども向けとはいえ、大人になっても何度でも繰り返し反芻して、都度都度噛み締める価値のある本だと感じます。
 ことに、人の仕事が専門分化して、個人レベルではとかく消費専門家のようにならざるをえない現代人こそ、「人間分子の関係、網目の法則」について、よくよく自覚した方がよいかとも思えます。
 また、人生において後悔することは多けれど、後悔できることで成長もしているんだ、と、本書は教えてくれます。
 その意味で、ある種、“救いの本”とも言えるかもしれません。

 21世紀の今、そこここで起きている諍いや戦争を停められない不甲斐なさに、たくさんの人が心を痛めています。
 人間の歴史というほんの一瞬の時の流れの中で、今この瞬間がどんな意味を持つのかはわかりません。
 それでも、分子のような小さな存在の1つ1つが、“よくあろう”とすることで、全体としての大きな流れは、きっと“よい方向”へと動いていくんだろうと信じたい。

20230722_10  思えば、本書が多くの人の人生の礎になっているのと同じく、私にとってジブリ映画はいつも、“よくあろう”という気持ちを呼び覚ましてくれる存在でした。
 「自分の行動を自分で決定する」という魔法のような力について、もっともっと自覚的でありたい。
 よく見て、よく考えて、後悔のないように決定したいーーー。
 本書に導いてくれたジブリと宮崎監督に、感謝です。

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2023年7月22日 (土)

『奥日光の鳥100』

20230712img_8992  先週、表題の書籍を読了。
“ミニ野鳥友の会”の友人が奥日光に行った折、私の分も買い置いてくれていたものです♪
 本書は、奥日光でよく観られる野鳥100種を、分類・名前・写真・特徴・鳴き声・“ちょっと一言”の6項目について、
端的に整理・紹介してくれています。フォーマットに即して、無駄を省いて簡潔にまとめられているので、とても読みやすい!
 我が家は、本書掲載の100種のうち、今月上旬段階で62種までは観ていました。残すところ38種!
「せめてあと、ホオアカとニュウナイスズメとアオゲラと、、、欲を言えば高原モズとアカハラとコマドリと、、、もっと言えばセンダイムシクイとキクイタダキとコガラとコムクドリくらいは観たいよね~」と話しています^0^;;。欲張りです(笑)。
 「ジョウビタキ」の項に、別名として「翁鳥」とか「紋付鳥」とか「ヒッカタ」なんていうものまで紹介されていて、いろんな愛称があるんだなぁ…とビックリ!
 この夏は、我が家で今期撮影できた鳥たちの写真を、一冊のPhoto Bookにまとめよう♪ということになっていて、目下、“しまうまプリント”で鋭意制作中~!
 本書をかなり参考にさせてもらっています♪
(先日の猛暑下、夫に、「鳥ってさ、あんまり暑そうな顔しないよね」と言ったら、「表情筋が発達してないからね」と言われました。なんか面白くない…^0^;;)

All About Birds】←こんなサイトもあるんですね~! 

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2023年7月18日 (火)

『トリノトリビア』

20230710_5  先週頭に、表題の書籍を読了。
 とっても楽しい本でした♪
 日常的に目にする野鳥たちの、ちょっとしたトリビアを、面白く紹介してくれていて、今まで以上に身近に感じられるようになりました。
 “ミニ野鳥友の会”の友人がよく、鳥の仕草などを見ながら、それに合わせて“セリフ”を代弁したりするので、よく笑わせてもらっていますが、本文に添えられたマツダユカさんの漫画が、それと似たような効果を醸し、今後はスズメやヒヨドリを見たら、人間の言葉でしゃべっているのを想像してしまいそうです^^。
 「スズメはほおの斑点が大きいほどモテる」とか「ハクセキレイは飛ばなくていいなら飛ばない」とか「メジロの舌は二枚舌」とか「カラスやトビが原因の火事がある」など、1つ1つのエッセイのタイトルからして興味深い♪
 「シジュウカラにもいるパリピとシャイ」という項では、同じ種の鳥でも、個性は様々で、お祭り好きでツルむのが好きな鳥もいれば、シャイで引っ込み思案の鳥もいる、という話が紹介されていましたが、さもありなん…と、ますます鳥見の愉しみが膨らみました♪
 私が一番驚いたのは、「ハトの育児は年中無休」というお話の中で紹介されていた“ピジョンミルク”について。オスもミルクをあげられる仕組みがあるのだそうで?! 詳しくは本書を是非ご覧くださいませ^0^!
 続編も期待します♪ 楽しい本を、ありがとうございました!!

【先週末の戦場ヶ原】くだんの“ミニ野鳥友の会”のご夫婦が、先の金曜夜に日光入りし、翌土曜日に戦場ヶ原で2度目の鳥見をしたそうで、Facebookのストーリーズでレポートしてくれたのですが、素晴らしかった~! ウソ、アオゲラ、アカゲラ、ノビタキ、アオジ、オシドリ♂幼鳥や♀、ウグイス、ホオアカ、そしてオオルリの囀りまで♪ 我々夫婦も、是非とも再訪したいです!

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2023年6月30日 (金)

『鳥類学者だからって、鳥が好きだと思うなよ。』

20230624_8  表題の書籍を先週読了。
 近年は極度に細分化/専門化された研究者の仕事。血税を使っている場合は、相応のアウトリーチは必須だと思われますが、よほど工夫しないと、専門的な内容は大抵、門外漢にはチンプンカンプン。本書はそういう意味で、一般人が謎の専門家の活動内容に触れられる格好の還元形態かもしれません^^;。
 本書の著者は、生態学者あり、鳥類学者であり、ヨシゴイ学者(?)の川上和人氏。
 そして、どう考えても8~10歳ほどサバを読んでるのでは…?と思われるほどの1960年代からのサブカルオタクでもあられるようで…^^;;。
(担当編集の方は、散見されるJASRAC案件的な文章表現に、さぞかし頭を悩ませたことでしょう~笑)

 どのエッセイも抱腹絶倒のエピソード満載で、10万人に1人の割合とも言われる鳥類学者の日常というものを、ワクワクしながら知ることのできる楽しい本でした。中でも私がとても興味深く拝読したのは、第五章の「鳥類学者、何をか恐れん」の章。気づくと、この章にだけ付箋をやたら立てていた自分。。。
 「日本の鳥類は種類が少なく行儀よい。」(P.166)という、ボルネオ島やその他の国々と比較した日本の状況を指摘されて膝を打ったり、「インドネシアを含む東南アジアは、日本の鳥とのつながりが深い。」(P.169)という、世界の同心円構造への気づきと、環境保護の考え方に強く共感したり、「我らは、人類共通の財産である生物の多様性を確保し、そのもたらす恵沢を将来にわたり享受できるよう、次の世代に引き継いでいく責務を有する」という生物多様性基本法の紹介(P.174)に、ノアの箱舟的責任を感じたり、「外来生物問題は、絶滅なき侵略というグローバリゼーションによる世界均質化の問題を孕んでいるのだ。」(P.179)という指摘に、“外来生物”も元はと言えばヒトに“どっかから連れて来られた”被害者では…?と思わされたり。。。
 とにかくこの第五章では、空や月や火星にまで手を延ばそうとしている人類こそが、史上最恐の自発的外来生物だと思わされて仕方ありませんでした。この流れを止めることは出来ないのでしょうけれど、そういう自覚を持って、青い地球をどう保全するかを、真面目に考えたいな…と思いました。
 それにつけても、西之島の進化というのは本当に、生態学においてミニ・ビッグバンをリアルに観察するかのような貴重な史料の宝庫なのですね~!

 明日はまた、『そもそも島に進化あり』という本の文庫版が出る模様♪ 鳥の観察に目覚めた私は、川上先生の本を契機に、生態学にもちょっぴり目覚めてきたかも~!

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2023年5月30日 (火)

『野の鳥の四季』

20230517_8  野鳥撮影のお手本が欲しくて、先日OAZOをウロウロと探して回りました。
 野鳥の写真集というのは思いのほか少なく、結局、熊谷 勝さんというカメラマンさんの『野の鳥の四季』という一冊を購入。
 表紙には、メジロの番が仲睦まじく羽繕いしている写真が。
 このカメラマンさんは、野鳥を美しく撮ることももちろんながら、彼らが暮らす森や林などの環境も含めて、モチーフを精選されておられるようです。
 私などはついつい、野鳥それ自体を観察するために、鳥だけを大写しにしてしまうことが多いですが、どこでどんな風に暮らし、どんな場所が好みで、どんな風に採餌しているか等にも気を配りながら、その全体の暮らしぶりが美しく感じられるシーンをフレームに収めることを意識したいと感じました。四季折々の野や山の変化と併せ、野鳥たちも少しずつ姿を変えて、自然に溶け込むようにして生きているんですよね~♪

Canon Bird Branch Project】また、キャノンさんのサイトには、写真図鑑のページがあり、素晴らしくて見応えある写真がたくさん掲載されています~♪

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2023年5月 8日 (月)

『いい子症候群の若者たち』

20230503  GW半ば、リビングに転がっていた本書。
 どうやら息子が興味本位で買って読んだようです。
 カバーの帯部分には以下の記載が…。
・子どもが理解できない親
・学生の気持ちがわからない先生
・部下とのコミュニケーションに困っている上司
 一体全体、どの煽り文に惹かれて手にしたのか…??
 そんな疑問が頭をもたげ、つい読み始めたら止まらなくなって一気読み(苦笑)。
 ほとんどは、近年の若者心理について書かれていたのですが、私としては、最後の方の、若者に向けて書かれた箇所に惹かれました。
 バブル崩壊後の不遇な時代に生まれ、社会保障では過分な負担を負い、少子化で競争は緩和されているとはいえ、大学全入で学歴での差別化も難しく、SNSでの情報氾濫や過度な“叩き”にビクビクする現代っ子は、おおむね横並び気質で指示待ち人間になりがちなのだとか。
 そんな若者たちに対し、著者が問うていた「あなたは何のために勉強するか」という質問。
 市川伸一さんという方の『現代心理学入門3』という本からの抜粋で、下記のような動機を挙げておられました。
①充実志向:「新しいことを学ぶのは楽しいから」
②関係志向:「皆がしているから」
③訓練志向:「頭の訓練になるから」
④自尊志向:「人に負けたくない」
⑤実用志向:「仕事に活かすため」
⑥報酬志向:「学歴や出世のため」
 そして、若者には是非、②と⑥以外の動機で学んで欲しい…と書かれていました。
 うちの息子は、①と③以外の動機は持ち合わせていないように見えますが、それって渡世の上では不利になりがちな気もしなくもなく…(GPAはズタボロです…^^;;;)。
 ただ、最近の若者を保守的にしている原因はむしろ、大人の方にある、という著者の主張に痛く共感しました。本書の唯一の提言である「大人のあなたがやるべきだ。まずはあなたが挑戦するべきだ。」という言葉に、襟を正しました。
 著者は、モチベーション&イノベーション研究者とのことですが、人を鼓舞するのもお上手なようですーーー^0^。
 本書を読んでいたらふと、過日報道された「ハクトR」の月着陸失敗のニュースを思い出しました。あの報道には様々な感慨が寄せられたと思いますが、中には、「そんな無謀な挑戦して…」とか、「経済的に大丈夫か…」とか、「もっと安泰な暮らしも出来たろうに…」とか、ネガティヴなものもあったかもしれません。まぁ何を思うのも自由だけれど、挑戦する人を揶揄する暇があったら、自分が挑戦しろや、というのが本書の提言とも言えますね^^。私は偶然手に取って読んでみたわけですが、いい刺激をいただきました♪

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2023年4月17日 (月)

『ロシア点描』

20230408_12_20230413063801  先週、表題書籍を読了。
 著者は、目下の世界の緊張状態が始まった頃にやたらとTVでもお見掛けした方ですが、コメント等を聞いたり読んだりする中で、軍事とは程遠い、やわらかでやさしい雰囲気を感じていました。
 そして今回の本も、そんな小泉さんのテイストが滲み出る、素敵な“語り下ろし”エッセイでした^^。
 人間、身近でないモノにはどうしても恐れの感情を抱きがちですが、ロシアという大国の歴史や常識や人々の暮らしを、少しでも身近に感じてもらいたいという思いが、ページのそこここから感じられました。
 ただ、そこはそれ、ご専門は軍事研究ということで、最後の六・七章は、長年の考察に裏打ちされた、国際関係論・権力掌握論が展開され、ドキドキしながら読みました。
 私が最も考えさせられたのは、六章の「プーチン大統領の世界観」という項。「独自の核戦力を持って非同盟を貫ける“大国”だけが主権国家」であるという考えに基づけば、日本はアメリカによって主権を制限された国と見られてもおかしくない、という解説でした。無論著者は、そうした世界観を分析しつつも、21世紀はもっと個々人のアイデンティティの持つ力が侮れない時代だとも看破しておられましたが。
 なんとなく、いつも同盟国の顔色ばかり窺って、自らの寄って立つ哲学が希薄に感じられる自国を不甲斐なく思う反面、ポストポスト冷戦時代の“平和”のあり方は、どんな形が安定的に継続できるのか、今後の動向がますます気になるのでした。
 それにつけても、ロシアの花屋さんは24時間営業だという話にも驚いたし、“森の民”たるロシア人は、ダーチャ(別荘)での自家菜園に余念がない等、生活に花や植物や森が欠かせない自然派志向であることが意外で、相互理解は大事だよなぁ…という結論に至りました^^;;。
 パワーバランスという、まさに動的平衡を保つのが至難の業である世界を痛感したのでした。

20230410_6 【朝日生命大手町ビル】昨年10月から解体準備に入ったくだんのビルですが、今やすっかり覆いに囲まれ、周辺環境も激変しています。数ヶ月後には一体どんな景色になっているのでしょう…?

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